高知・室戸岬沖で別の船が「第八しんこう丸」を目撃
国の運輸安全委員会の調査やこれまでの取材で、おととし12月22日 午後7時半ごろ、第八しんこう丸と同じ航行ルートを進んでいた別の船の乗組員が、高知県・室戸岬の約30キロ手前で第八しんこう丸を目撃したことが分かっています。
航行ルートに近い場所にある気象観測所のデータによると、当時の海は穏やかだったということで、別の船の運航会社は当時「自然の潮の流れがあったり、急な突風が吹いたりということはないと思う」と話しています。また、航行中の第八しんこう丸については「特に変わった様子はなかった」ということです。

「手を振ったのが最後」船長の母が見た出航前の第八しんこう丸
息子である戸田船長について「ワンマンなところもあったけど何事も一生懸命だったので立派にやっていた」と話す母・明美さん。明美さんは第八しんこう丸が出航する前日、準備のため宇和島港に入港する船の姿を見ていました。
「第八しんこう丸が橋の下をくぐっていくのを見ました。そして手を振って それが一番最後になりましたね」明美さんは当時の様子をこう振り返りました。

「クジラに乗って…」母が詩に込めた思い
悲痛な思いが募る中、明美さんは自作の詩に胸の内を綴っています。
■明美さんの詩
「私が今 絵を描くとしたらクジラに乗って源二を捜しに行く絵を描く
第八しんこう丸を見つけ出すまでもぐり続ける」


「今、源二さんに会ったら何と声をかけたいですか」
明美さんにこう尋ねると、涙を流しながら息子である戸田船長への思いを語ってくれました。
「夢みたいな話ですけど(息子を)やっぱり抱きしめたいですね。『よう頑張ってきた』と言いたいですね。第八しんこう丸を捜しに行きたいです」

これまでの捜索では、和歌山県すさみ町の南西およそ30キロの沖合で「第八しんこう丸」と同じ燃料の重油が大量に浮いているのが確認されていますが、救命いかだなど船のものと見られる浮遊物が見つかっていないほか、自動で発信される救難信号も受信されていません。

船が行方不明となってから2年が経過しましたが、船長の母・明美さんの中では、あの日のまま時間が止まっていて「自分もこの世にいるのかあの世にいるのか分からないときがある」といいます。
明美さんの願いはただ1つ。「1日でも早く手掛かりが欲しいと思うだけです」

乗組員の家族が一刻も早い事態の進展を望む中、海上保安庁は11月末までに巡視船艇 延べ85隻、航空機 延べ77機、それに海底を調べる測量船を出すなどして捜索を行っています。しかし依然として有力な手掛かりは見つかっておらず、今後も捜索を続ける方針です。