ピザが人気の愛媛県松野町のレストラン。ピザ窯で出た灰を活用し、去年ある評価で“2つ星”を獲得しました。その取り組みとは?

■地産地消にこだわり 日本サステイナブル・レストラン協会の格付けで四国初の2つ星獲得

松野町にあるレストラン「セルバッジオ」。滑床渓谷のほとりに緑に囲まれて佇む店には、県内外から多くの客が訪れています。
看板メニュー “世界一のマルゲリータ”
看板メニューは「世界一のマルゲリータ」。ナポリの世界大会で最優秀賞を受賞した職人のもとで修業を積んだ、北久裕大(きたくゆうだい)さんが料理長を務めています。

(北久さん)
トマトは松野町のトマトで、バジルは今はまだ違うんですけど、松野町の農家の畑を間借りしていて、今そこにバジルを植えているので、夏はそれを使わせてもらっている

料理長 北久裕大さん
野菜や肉、魚など店で使う食材のほとんどが地元産。できる限り顔の見える生産者から直接仕入れているといいます。地元の新鮮な食材が味わえるということもあり、訪れた人も大喜びです。
(カリフォルニアからの客)
おいしい!
(東京からの客)
とにかく野菜が美味しくて愛媛に来たかいがありました


日本サステイナブル・レストラン協会の格付けで2つ星を獲得
地産地消にこだわるセルバッジオ。去年11月には、飲食店の持続可能な取り組みを後押しする「日本サステイナブル・レストラン協会」の格付けで、四国で初めての2つ星を獲得しました。

北久さん)
まさか2つ星とれるとは思っていなかったので純粋に嬉しかったです。地元の農家さんが頑張ってくれて自分たちのレストランがあると思っているので、出来る限り地元の農家さんの野菜を使いたいという思いがある


そんなセルバッジオが2つ星を獲得した理由がもう1つあります。

■廃棄していたピザ窯の灰 食器の原料に

ピザ窯の灰を別の形で活用
ピザを焼く窯で使用しているのは間伐材の薪。この薪を焼いた後に残る灰は、別の形で活用されています。

(北久さん)
冷まして、ゴミ袋に入れて砥部焼の作家さんのところに持って行っています


産業廃棄物として業者に依頼して廃棄していたピザ窯の灰。この灰が料理を盛る食器に使う、愛媛の伝統工芸・砥部焼の原料として一役買っているんです。

北久さんから届く灰を原料として取り入れている、松山市内の砥部焼窯では…
ガラス質の艶や強度を出すために使う釉薬
(砥部焼作家 宮内太志さん)
これが基本の透明釉になるんですけど、大体これがさっきの灰が25%ぐらい入った薬


灰が使われているのは、陶磁器の表面にガラス質の艶や強度を出すために使う釉薬です。

(北久さん)
最初は灰の話もなく、純粋にそのお皿を使いたいというところから灰の話になって、ぜひ使ってくださいという流れで使ってもらうようになった


灰を釉薬にする手順は、まずバケツの水にさらしアクを抜いていきます。数週間かけて何度も上澄み部分の水を取り替え、沈殿したものを振るいでこして乾燥させた後、他の原料と灰を混ぜれば完成です。

元々は、個人の家の薪ストーブで出た灰などを使っていたという宮内さん。現在は、ピザ窯の灰を他のところで出た灰と混ぜて、様々な種類の釉薬を作って使っているそうです。

(砥部焼作家 宮内さん)
自分で灰を作ろうと思うとたくさん燃やしても少しの量になるんですけれども、1回にまとまった量をいただけるのはとても助かります


“ピザ窯の灰”が”食器の原料”に
ピザ窯で出た灰が砥部焼の原料になり店で使う食器として戻ってくる循環は、ごみを減らすだけでなく、持続可能なものづくりにも繋がりそうです。

食材の調達から店で出るゴミまで、地元の資源を活かすことにこだわる北久さん。今後も様々な取り組みを思い描いているといいます。

北久さん
(北久さん)
最初は「大丈夫?」みたいな声もあったんですけど、やっていく中で応援してくれる方はどんどん増えていってるので、もっと応援してもらえるようなレストランにしていけたらいいなと思っている