かつて鉄の町として栄えた岩手県釜石市ー。1960年代に9万人を超えていた人口はその後減り続け、2023年11月末時点で3万人を切りました。先月の選挙で初当選した小野共市長は、人口減少に歯止めがかからない厳しい情勢の中での船出となりました。

釜石市によると11月末時点の市の人口は2万9983人で、1937年に岩手県内で盛岡市に次いで2番目に市制施行して以来、初めて3万人を切りました。背景には基幹産業であった鉄鋼業の合理化や縮小に加え若者の流出や東日本大震災など複合的な要因があると見られています。

1950年(昭和25年)に発足した富士製鐵(現・日本製鉄)が釜石市で製鉄所の操業を開始して以降、最盛期には1万人を超える従業員が製鉄所で働き、市の人口は1962年にピークを迎え9万人を超えました。しかしその後製鉄所は合理化を繰り返し、1989年には最後の高炉が休止。市の人口は60年間でピーク時の約3割にまで減少しました。

11月に行われた選挙で初当選し、8日に初の会見に臨んだ小野共市長は「人口は自治体の施策の結果だと思う」との認識を示したうえで「人口増加に転ずるのは難しい。減少幅を最小限にするため施策を充実させることが現実的だ」と話しました。

釜石市は2016年に人口ビジョンオープンシティ戦略を策定し、2040年に2万7千人の人口を維持する目標値を掲げています。ところが実際の人口は市の推計値を上回るスピードで減少していて、これまでの取り組みの成果が問われる事態となっています。急激な人口減少に歯止めがかからない中で船出した小野市政は、戦略の見直しを含む難しい対応を迫られそうです。