東日本大震災による津波で袖野地区の漁港は大きな被害を受け、康男さんも養殖施設や船が流されました。
(小松康男さん)
「辛いね。泣いても涙出ないっていうが、まあその通りだったね。だって何もないんだもんね、全部なくなって」
被害の大きさに一度は漁業を諦めかけた康男さんでしたが、自らを奮い立たせて養殖を再開させました。
(小松龍介さん)
「震災になって少し経ったらじいちゃん船買って養殖始めようとしたんですよ。それ見て『すげえな、じいちゃん』って」
龍介さんは今年2.2トンの中古の船を購入しました。「第18小松丸」と名付け、進水式を行い、親戚や友人などおよそ40人に船を披露して漁師としての第一歩を踏み出しました。


若い漁師の誕生に浜は活気づいています。
(地域の漁師)
「この浜で何十年ぶりに二十歳の漁業者が出た」
「本当に歓迎してるよ。みんなでお祝いするくらいだ」
(同級生)
「龍介は本当に付き合い長くてもうずっと十何年の付き合いなんですけど自分の船持つなんてかっこいいです、はい」
龍介さんは新たな挑戦も始めています。陸前高田のブランド貝、エゾイシカゲガイの養殖を手がけようとしているのです。
(小松龍介さん)
「ホタテも貝毒とかで出荷できないので安定しないんですよ。高田で一番安定してるのやっぱイシカゲかなと思って」
お椀型の発泡スチロールの容器に砂を入れて養殖するエゾイシカゲガイ。海から養殖容器を引き上げてみると…
「最初このくらいのサイズで、いまそうですね、このくらいまででっかくなりました。これ、こっちで養殖できるんじゃないかなと思って。もう楽しみですね」

一人前の漁師を目指して、龍介さんの夢は膨らみます。ワカメの刈り取り作業が始まった3月下旬、この日も龍介さんと康男さんは、2人で朝早くから海に出ました。二人三脚で歩む日々は続きます。
(小松龍介さん)
「やっぱじいちゃんに負けないような漁師になりたいし、広田で一番の漁師目指して頑張りたいです」

祖父の背中を追いかけ、夢だった漁師の道へ。龍介さんの挑戦は始まったばかりです。