なぜ、この場所に犠牲者の名前を刻んだ慰霊碑を建てることが認められないのか?

理由の一つに旧役場庁舎の建物の保存か解体かを巡って、町の人々の間で感情的な対立が生じた過去の経緯があります。
建物は「震災を思い出してつらい」という町民の心情に配慮する形で2019年に解体され、今は緑地となった跡地に被災の状況を説明する看板だけが建っています。
2023年12月、慰霊碑の問題をきっかけに町の中で対立が再燃する可能性を問われた平野町長はー。

(2023年12月22日 平野公三町長のインタビュー)
「大いにその部分ではあり得ると思います」
「あの箇所(旧庁舎跡)については大事な場所と十分承知しているが、(慰霊碑)は多くの人のコンセンサスを得ることは厳しい状況にある」

慰霊碑を伝承碑としたものの、建立に対する反応はさまざまです。
町議会は2025年8月、町に対して「建立は旧役場庁舎跡地ではなく現在の町役場にすべき」とする意見書を提出。

また9月の説明会では、旧役場庁舎での犠牲者を優遇しているなどとして伝承碑の必要性を疑問視する声も聞かれました。

(住民の声)
「1000人以上が亡くなっている。津波検証結果のこともあるのに、過去を思い出してしのぶ場所と(旧)役場(庁舎)がなるのか不思議でなりません」
旧役場庁舎での出来事に対していまだに複雑な思いを抱く町民も少なくありません。

(職員遺族の小笠原人志さん)
「いろいろな考え方があるんだろうと思いますんでね」
「それなりの割合でね(建立は)駄目だという意見もあるだろうなということは率直に理解していきたい」

「行政の判断ミスで同じような災害を大きくしないという教訓が伝えられれば、建立の意味があるのじゃないのかな」

さまざまな思いや意見が交錯する中、2025年内の伝承碑の建立を目指して計画が進められます。