18日、北海道南部の八雲町の国道で起きた都市間高速バスとトラックの衝突事故。

 この事故で、バスの乗客で函館市職員の若﨑友哉さん(33)、鹿部町のパート従業員髙清水忍さん(57)、札幌市清田区の髙橋裕美さん(55)と、バスとトラックそれぞの運転手のあわせて5人が死亡し、バスの乗客12人がけがをしました。

 トラックが衝突し、えぐられたように大きく壊れたバス右側の前の部分。
 バスの運行会社によりますと、亡くなった乗客3人は運転席のすぐ後ろの窓側の席を予約していて、前から函館市職員の若﨑さん、札幌の髙橋さん、鹿部町の髙清水さんが座っていたということです。若﨑さんの上司は。

死亡した乗客3人は運転席の後ろの窓側席に座る

 若﨑さんの上司・函館市総務部人事課 葛西亘課長
「(けさも)普通に出勤してくるのではないかと錯覚するくらい急な出来事だった。仕事面ではきっちり発言してくれる、頼りにしていた職員でした。将来を期待していたので残念気持ちでいっぱい」

 亡くなったバスの運転手、興膳孝幸さん(64)は勤続15年のベテランで、「優良乗務員」にも選ばれていました。「後輩乗務員からも慕われて、よく話しかけられたり、アドバイスを本人がしたり、というのも含めて、信頼が厚いというふうに感じておりました」

興膳孝幸さんの親戚
「信じられないっていう感じ。(人柄や思い出は?)家族思いっていう印象」

 一方、養豚会社のトラックは当時、豚30頭を運搬するため農場から食肉加工場へ向かう途中で、近くを走行していた車のドライブレコーダーからトラックが対向車線にはみ出したのが事故の原因とみられています。

日本クリーンファーム吉原洋明社長

 日本クリーンファーム 吉原洋明社長
「大変ご迷惑をおかけして申し訳ない。(トラック運転手の)直近3か月の勤務状況を確認すると、過重労働にあたるよう労働時間にはなっていない」
 
 警察は、午後から国道を一時通行止めにして、現場の路面状況を記録するなどして当時の状況を調べいます。



これから本格的な観光シーズンが始まっていく中で起きた今回の事故なんですが、事故多発地帯と言われる現場で何が起きていたのでしょうか?

堀内大輝リポート
「国道5号線の事故現場です、発生から一夜明けましたが、道路にはまだ事故の跡が残っています」

堀内大輝キャスター

 18日、北海道の八雲町で起きた都市間高速バスとトラックの正面衝突事故。バスに刺さるように衝突しているトラックの姿が、事故の衝撃の大きさを物語ります。

日本クリーンファーム吉原洋明社長
「映像を見る限り、当社の車がセンターラインを越えてぶつかっったんだなということで」

 5人の犠牲者が出た今回の事故について警察は、トラックが反対車線にはみ出したとみています。

 現場は森町から八雲町へ入ってすぐの場所です。トラックが走った道を実際に通ってみると。

堀内大輝リポート
「函館方面から札幌方面へ向かっています、いま現場の100メートルほど手前ですが、このあたりから緩やかに左カーブが見えてきました、ちょうどこのあたりが事故現場ですが、見た感じではカーブが急、曲がり切れない、そんなカーブではなかったと感じる」

 一方、バスが走っていた札幌から函館に向かう車線から見ると。

堀内大輝リポート
「このあたりから少し狭くなって1車線になって路側帯も幅がなくなって、かなり道路わきとの距離が近い、逃げ場がないと感じます、右車線からトラックが向かってくると、バスは逃げようがないと感じましたね」

 道路自体は見通しも良く、急カーブでもありませんが、道幅の狭さを感じる道でした。そして、現場近くではこんな標識も。

道路標識の「正面衝突事故多し」という表示

 堀内大輝リポート
「現場の近くの道路標識にも、正面衝突事故多しという表示がありますね、このあたり元々そういった事故が多いという場所なんでしょうか」

 2004年8月、今回の事故と同じ八雲町の国道5号線で、乗用車が反対車線を走っていたダンプカーと正面衝突し、乗用車の男女4人が死亡。
 
 同じ8月には、今度は軽乗用車が大型車2台と相次いで衝突し、軽乗用車に乗っていた男女2人が死亡するなど、事故が多発する一帯でもあったのです。

堀内大輝リポート
「正午過ぎです、きのうのこの時間帯に事故は起きました、1日たったきょうも通常通りバスの運行は続いています」

 札幌のバスターミナルでは…。

バスの利用者
「自分が気をつけようがないので、なんとも言えないというか、ちゃんとシートベルトとかはしようと思います」
「結局乗る方としては気にしても意味がないのかなと。運行してくれる方が事故を受けてどれくらいの対策をしてくれるかどうかっていうのが非常に大事」

 今回の事故の原因はまだ分かりませんが、なぜ同じ道路で繰り返し事故が起きるのか、交通事情に詳しい北海道大学の萩原教授は。

北海道大学大学院(交通工学)萩原亨教授
「20年ぐらい前、あの区間は正面衝突、特に夏の天気の良いときにおきるということが頻繁にありました。多くの原因は、ドライバーの意識が遠のいていると、今回も緩い左カーブ、トラックがというお話を伺っていますが、緩い左カーブですので、ほんの瞬間意識が遠のけばそのまままっすぐ、だいたいハンドルはまっすぐ持っていますので、対向車線に向かってしまうと、ということは十分あり得るんじゃないかと」

 一度起きると、重大な結果を引き起こす正面衝突事故…。事故を防ぐために、道路と車、双方の対策が必要だと指摘します。

北海道大学大学院(交通工学)萩原亨教授
「高速道路では真ん中に、中央分離帯のところにワイヤーロープ式と、さらにしっかり分離する施設も整備されていて、多くの人が運転支援装置というのをついた車両をお持ちかと思います。今後そういうものが大型車にも装備されてくれば、今回のような事故はますます減っていくんじゃないかなと思います」

 
 警察は、午後から国道を一時、通行止めして現場の路面状況を記録するなど、当時の状況を調べています。