「そっち行ったらダメ!」
2022年12月31日、大みそか。
札幌市中央区円山西町に住む後藤晃さんは、日課のランニングに出かけようとしていました。

いつものコースに入ろうとしたそのとき。
「そっち行ったらダメ!」
近くのマンションから、住民が窓を開けて、後藤さんに向けて叫びました。
「クマいる!」
札幌の雪深い冬。昼間の住宅地。自宅のすぐ近く。
クマがいるとは想像もしておらず、後藤さんは「何を言われているんだろう?」とすぐには理解できなかったと言います。
その日の午後0時半過ぎ、円山西町にある児童相談所などの敷地で、クマが目撃されました。その後クマは敷地の中を歩き、柵を越えて住宅地のほうへ移動したとみられています。

初詣客が訪れる北海道神宮や、円山動物園の近くということもあり、地域には緊張が走りました。
後藤さんは、「山は近くにはあるので、クマがいるとは思っていた。それでも、まさか住宅地に入ってくるなんて、想像もしていなかった」「小学生の子どももいるので、本当にこわいと思った」と振り返ります。
少しタイミングが違えば、クマと出会ってしまっていたかもしれない…。
その体験をもとに、後藤さんは「自分だからできること」を考えるようになりました。
約2年後の冬、後藤さんは、町内会の回覧板でまわってきたお知らせに目を留め、一歩を踏み出します。