■駆除されたのは「人を避けない」ヒグマ

今回の死亡事故では、現場近くで母グマ1頭と子グマ2頭がハンターによって駆除されました。
男性の遺留品から採集した体毛や唾液と、母グマの肝臓を照合した結果、DNAが一致し、男性を襲ったのは母グマと断定されました。
母グマは、体長140㎝、体重117㎏、11歳。
出生年の2014年から知床国立公園で毎年のように目撃されていた個体で、2025年に入ってからは、子グマと一緒に歩く姿が30件以上も目撃されていました。
「人を避けない。人に出会ってもすぐに逃走しない」といった行動が度々確認されていて、知床財団は、母グマを追い払う対応を繰り返し行っていた経緯があったことを明らかにしています。
羅臼岳がある知床半島は、2005年に世界自然遺産に登録されて以降、ヒグマが人を襲う事故は初めてです。
しかし、知床のヒグマに詳しい専門家・鳥獣対策コンサルタントの石名坂豪さんは、「ヒヤリハット」は山ほどあったと、知床の山の実態を指摘します。

・鳥獣対策コンサルタント 石名坂豪さん
「良くも悪くも知床のクマは非常に人を怖がらない。いわゆる“人慣れ”状態が加速していますので、それは餌付け行為がなくても、単純に人と出会って怖い目に遭わなければ、人のことは気にしなくなるんです。こうしたことが、北海道の中で一番進んでいるのが知床地域だと思います」