■生かされなかった“予兆”

《8月10日》
羅臼岳の登山道では、登山者と親子グマと人が3~4メートルまで接近する事案が発生していました。
外見上の特徴から今回駆除された個体と同一である可能性が高いとされています。
《8月12日》
羅臼岳の登山道でヒグマが登山者に接近してきたことから、登山者はクマスプレーを使用。
噴霧した量が微量だったためか、ヒグマはその後も5分ほど登山者に付きまとう行動を見せたということです。
その時の目撃者からは「駆除されたヒグマの特徴と似ていた」という情報提供がありました。
こうした事態があったにもかかわらず、羅臼岳の入山を規制する判断が遅れたことで今回の事故が起きたとの指摘もあります。
その背景には国立公園の知床ならではの事情があるとみられています。

知床は、国が指定し管理する国立公園で、野生動物の保護や研究を担当するのはNPO法人の「知床財団」です。
しかし、「知床財団」を設立したのは地元の羅臼町と斜里町。さらには国有林を含むため、林野庁や北海道なども関与し、行政機関が多岐にわたることから、迅速な入山規制ができなかったと推察されています。