10メートル地点の「クマ」…見えるか?

手を挙げている学生の足もとにクマを置いています。しかし、ここでもクマは見えません。
下川さんは、「住宅地によく出ると言われている、若いオスのサイズだと、場所によっては5メートル・10メートルでも見えないことがわかった」と驚きながら、そうした場所は「ここだけじゃなくて、ほかのマチ、札幌市内でもいろいろなところにありうる。対策をしないと被害は増える」と話していました。

実験中、北海学園大学の宗廣(むねひろ)みことさんは、町内会長の久保専一(くぼ・せんいち)さんに草刈りを企画した経緯を聞いていました。久保さんは、「子どもたちが遊びに来るのに、安全な場所でないと遊べない。10年前にここでブランコに乗っていた子どもたちがすぐそこでクマを見て」と教えてくれました。

この公園では、2012年、小学生が、この笹やぶにいるクマを目撃しているのです。
宗廣さんは、「子ども目線でも撮ったほうがいいのでは」と提案してくれました。
先ほどの半分ほどの目線の高さで、遊具の場所から笹やぶを見てみます。クマが見えないのはもちろん、その場所にカーキの服を着た学生が立っていますが、彼もはっきりとは見えません。

遊びに夢中になっていたら…放課後の夕暮れどきで暗くなり始めていたら…。クマが動いて笹やぶが揺れても、気づかないかもしれません。
久保さんは10年前のクマ出没のニュースが印象に残っていて、町内会長に就任後、まちの安全を守りたいと草刈りを企画したのです。
草刈り当日。パネルを使って実験をさせてもらうと、予想以上の効果が実感できました。その様子と、実験を通して気づいたことは、後編の記事でお伝えします。(後編を読む)
文:Sitakke編集部IKU
2018年HBC入社、報道部に配属。その夏、北海道島牧村の住宅地にクマが出没した騒動をきっかけに、クマを主軸に取材を続ける。去年夏、Sitakke編集部に異動。ニュースに詰まった「暮らしのヒント」にフォーカスした情報を中心に発信しています。