短いアップ、グラウンドを走る犬

練習が始まると日本では見ない光景を目の当たりにする。まずアップが短い。全員で足並みをそろえて走ったりすることもない。自身もしっかりとアップをする選手だった佐竹さんでさえ「日本人はアップが長すぎるんじゃないか」と話した。

すると突如として、犬がグラウンドを駆け抜け、選手の横を通り抜けていった。ここは球場に隣接するサブグラウンドかつ公園のような場所ではあるが、練習中のメジャーリーガーの卵たちの横を犬が駆け抜けていくとは思わなかった。

グラウンドを駆け抜ける犬

さらにこの翌日、今度は練習中にキャッチボールをする子どもの姿があった。相手をしているのは佐竹さんだ。聞けばリハビリ中の選手の場合、家族が練習に来ることもよくあるのだという。家族との時間を大事にするアメリカらしい光景なのかもしれない。

選手の子どもとキャッチボールする佐竹さん

そんな日本では見られない光景がもう一つ。未来のメジャーリーガーを育てるための教育リーグの試合。公式戦ではない。有名選手が出ているわけでもない。それでもスタジアムに観客はやってくる。日本の社会人野球ではあまり見ない光景だ。

佐竹さんはアメリカでの経験をトヨタ自動車に持ち帰りチームへと還元する。狙うのはトヨタが強くなることだけではない。日本の社会人野球全体を盛り上げたいと話す。“都市対抗”と“日本選手権”社会人野球の2大大会は、ともに負けたら終わりのトーナメント方式。一発勝負のその雰囲気から“大人の甲子園”とも呼ばれている。甲子園でもなく、プロ野球でもない、“社会人野球”が盛り上がれば、日本の野球界全体のためになる。現役時代はレジェンドとして社会人野球を引っ張ってきた佐竹さん、これからは“裏方”として社会人野球を盛り上げるつもりだ。