佐竹さんに初めて会った日

ことし6月、初めてご本人とお会いする日、私たちは緊張していた。

私は入社5年目、普段は毎週日曜日に放送しているドラゴンズ応援番組「サンデードラゴンズ」のディレクターをしている。私も同行する若尾プロデューサーも大学まで野球をしていたので、もちろん佐竹さんの名前は知っていた。

投球練習する佐竹さん

「社会人野球界で活躍している、とんでもない球を投げる投手」「独特な投げ方でサングラスをかけてプレーする人」という印象だった。

その佐竹さんがことし7月の都市対抗野球大会を最後に引退する。私たちが緊張していたのは、引退するときだけ取材させてほしい、という厚かましいお願いをしに行くという自覚があったからだ。すごい人に会えるという元野球人としてのワクワクと、いくら仕事とはいえ、失礼にあたるのではないかという不安が交錯するなか、6月末に雨上がりのトヨタスポーツセンターを訪ねた。

佐竹さんは颯爽と室内練習場にやって来た。「初めまして!」。おそるおそる名刺を差し出すと、晴れやかな笑顔で対応してくれた。引退を間近に控えた緊張感や悲壮感は一切なかった。