今年4月以降「教育長が不在」という異常事態が続いている名古屋市の教育委員会。騒動のきっかけとなったのは、4年前に起きた名古屋市名東区のいじめ問題でした。当時中学1年生で自殺した女子生徒の遺族を取材ました。

岸田総理が真相究明の必要ありと答弁


6月13日の国会、参議院決算委員会。4年前のある少女の自殺について、真相究明の必要性があると岸田内閣総理大臣が答弁しました。

(岸田内閣総理大臣)
「ご遺族の事実関係を明らかにしたい、何があったのかを知りたい、こうした切実な思い、これを理解し、ご遺族に寄り添い対応に当たることはきわめて重要な姿勢であると認識しています」


少女とは、名古屋市の中学1年生だった齋藤華子さん。頑張り屋で、家族思い。小学校の卒業式では、将来の夢は美容師になることだと発表しています。父親の転勤で、名古屋の学校に転校したばかりでした。

2018年1月、自宅マンションの9階から飛び降り、自ら命を絶ちました。華子さんの父親は、今もその日の記憶にさいなまれています。



(華子さんの父親)
「毎日毎朝毎晩、毎日毎日あの日に引き戻される。妻もそう、残された兄弟もそうじゃないですか」

華子さんの将来の夢を自ら絶つことになった背景にあるのが“いじめ”です。

学校対応の実態


学校による生徒へのアンケートには、華子さんが部活で無視されるなどいじめがあったと書かれてありましたが、名古屋市教員委員会は「いじめはない」と結論づけました。

しかし、父親の強い要望で、外部の有識者による詳しい再調査が行われると、

(再調査委員会の担当者)
「部活動の練習において無視されたことをいじめと認定しております」
「子どもへの聴取は最初がとても重要。しかし教育委員会は生徒らの聴取について録音もせず簡易なヒアリングしか行っていなかった」

いじめを認定し自殺との関連性も指摘しました。


名古屋市では、華子さんの前にもいじめが原因とみられる自殺が相次ぎ、専門家による提言がありましたが、教育委員会は改善していませんでした。過去の提言を実践していれば、華子さんの自殺は防げた可能性があり、教育委員会や学校の調査は、ずさんだったと厳しく批判したのです。

(華子さんの父親)
「真実が知りたい。真実は一つしかないはずなんですよ。なかなかそこにたどり着けない」

名古屋市がいじめた生徒への聞き取りや学校関係者への処分は行わないまま、事態を終わらせようとするなか、父親の不信感は強まっていました。

父親の怒り


21年8月、父親の元に名古屋市の教育委員会の鈴木前教育長が話し合いに訪れます。遺族と学校・教育委員会が求める利益は違う、よほど歩み寄ってくれないと必ず平行線で交わりはしないと切に訴えると、

(名古屋市教育委員会 鈴木誠二前教育長)
「お気持ちは本当にわかっているつもりです。ですが、その子たち(いじめた側の生徒)のことを加害者とおっしゃっていただくのをぜひ勘弁していただきたい」

(華子さんの父親)
「それはあなただから言えることでしょう。親の立場で言えるかって言ってるんですよ」

重ねて、いじめた側の生徒を加害者と呼ばないようお願いする鈴木前教育長に対し、父親は「返せよ娘を!どんだけ歯を食いしばってきょうまで来たと思ってるんだ!」と怒りは止まりません。

その後、教育長は定年で退職しました。専門家から提言された、いじめ防止のための新たな組織の設立も検討されていますが、責任の所在を巡り話がまとまりません。