子どもたちの強い要望で国鉄などが特別に「ぞうれっしゃ」を運行


終戦から4年後の1949年、生き延びた2頭のゾウを見たいという子どもたちの強い要望を受け、国鉄などが特別列車を運行します。その列車は「ぞうれっしゃ」と呼ばれ、全国のこどもたち1万人以上が名古屋を訪れました。

三重県四日市市に住む萩原量吉さん(81歳)は、当時小学3年生。津市からぞうれっしゃで東山動植物園に行きました。


(萩原量吉さん)
「ゾウの上に乗せてもらいました。(ゾウの背中は)ものすごく毛が生えていて、硬い毛で。当時のズボンはとても目が粗いのでお尻が痛かった」

70年以上経っても、ゾウの背中の感触を鮮明に覚えていると言います。
戦後の貧しく何もない時代でしたが、平和が来た実感を持てたといいます。

今も動物園の史実を伝える絵本「ぞうれっしゃがやってきた」


ゾウを救った話を広く世に伝えたのが1983年に出版された「ぞうれっしゃがやってきた」(小出隆司 作/箕田源二郎 絵/岩崎書店刊)です。

作者の小出隆司さんは、動物園の苦悩や努力は長年埋もれたままだったと話します。園長らがゾウの命を救ったとはいえ、国の方針に逆らったためにほとんど記録に残されていなかったのです。


当時小学校の教諭だった小出さんは命や平和の大切さを伝えるため、元園長の北王さんを何度も訪ね、絵本に書きあげました。絵本の内容は合唱曲や劇にもなり、今なお語り継がれています。


(「ぞうれっしゃがやってきた」作者・小出隆司さん)
「どんな理由があっても戦争を回避する努力こそ人間の姿。(子どもたちには)そういう大人になってほしい」

今、戦争が続くウクライナでも動物たちが厳しい状況に置かれています。戦闘地域の動物園から動物たちを避難させていますが、満足なエサがなく衰弱が進んでいるのです。

今も昔も、動物たちが戦争の犠牲になっています。



東山動植物園には戦争を伝える「慰霊碑」がひっそりと建っています。
慰霊碑には戦争末期、人間の勝手な都合で殺された動物たちも祭られています。

戦後77年。「ぞうれっしゃ」の史実は、戦争の不条理を今も訴えかけています。

CBCテレビ「チャント!」8月11日放送より