2023年にオープンした名古屋市瑞穂区の「店員が気まぐれな カフェ・ド・モア」。働いているのは、知的障害や発達障害がある人々です。障害者の働く場である「福祉事業所」で、障害者雇用の1か月平均賃金の倍以上を支払うために奮闘する女性と、彼らのユニークな取り組みを取材しました。

発達障害などを持つスタッフが働く「気まぐれカフェ」

働いているスタッフの接客は明るく、作業マニュアルを見ながらコーヒーを淹れたり、簡単な料理の盛り付けをしたりといった業務を担当しています。

注文は書き取りではなく、スマホのアプリでクリックするだけ。支払いは自動精算機で決算できるので、障害があっても働きやすい環境に工夫されています。

スタッフは、全員明るく、ちょっと気まぐれ。店名も「店員が気まぐれな カフェ・ド・モア」です。しかし、常連客は気まぐれさも含めてこの店を気に入っています。

(常連客)
「ホッとする感じがありますね。(接客が)よくできたという気持ちもありますけれど、こちらも親のような気持ちになる」

丁寧で素朴な接客に、心が温まると評判です。この店をつくった竹内亜沙美さんは、中高生向けの就労支援施設も運営していますが、ある時、愕然とする出来事が…

(みらせん 竹内亜沙美代表理事)
「卒業生が初給料のメモを見せてくれた。1か月の給料が3000円でした。今想い出すだけでも、悔しい気持ちになる」

嬉しそうに見せてくれた初めての賃金は3000円。1日5時間、1か月に22日働いた報酬です。

客を待つだけではダメ! 福祉事業所による障害者賃金“倍増計画”

一般企業で働けない障害者の働く場である「福祉事業所」の場合、平均工賃は1か月で約1万6507円(B型・雇用契約無の場合)で、高卒初任給の10分の1です…そこで竹内さんが考えたのは!

(みらせん 竹内代表理事)
「新しいサービスを作って、全国平均の倍以上を出せるようなサービスを構築しています」

名づけて「賃金倍増計画」。今までは、ただお客さんが来るのを待つだけでしたが、その働き方をまるっと変えました。

新たに始めたのは、店で出している日本茶やコーヒー、紅茶の袋詰めセットの販売です。スタッフが4分割されたプラスチックのケースに、紅茶のティーバッグを1つずつ入れていきます。

(みらせん 竹内代表理事)
「みんな、4つ数えられますよ。あえて数えないで箱に入れて、(ティーバッグを)袋に入れるだけ。考えなくても目でわかるようにしています」

ケースに入れたティーバッグを袋詰めして、最後に包装紙で包んだら完成です。パッケージには、スタッフが描いたイラストが使われています。