3番打者が入れ替わる誤算

「サンデードラゴンズ」より 石川昂弥選手©CBCテレビ

次なる誤算は不安定なクリーンアップ、中でも「3番」が全く固定できなかった。

3番という打順が重要なのは、まず初回の攻撃で必ず打席が回ってくるということだ。
1、2番が出塁していれば、一気に先取点を奪う確率も高い。さらに4番につなぐ役割も求められる。ヒットもホームランも打てる、そんな好打者を置きたい。

開幕戦で、大ベテランの福留孝介選手を「3番」に起用したところから、彷徨い(さまよい)が始まったというのは言い過ぎだろうか。

ペナントレースを迎える時点で、実は確固たる「3番」候補者がいなかった裏返しなのだ。

前半戦で最も適役だった「3番」は、実は石川昂弥選手だったと思う。

数々のタイムリーにホームランに、高校時代から慣れた打順で、20歳の3番打者が躍動した。しかし、残念ながらその期間は短かった。

石川離脱という最大の誤算

前半戦の最大の誤算は、その石川選手がけがによって離脱したことだろう。

5月27日の交流戦オリックスバファローズ戦の走塁で負った「左膝前十字靭帯不全損傷」という重傷、その後、手術も受けた。

復帰まで早くても1年かかると見られている。

実は立浪ドラゴンズの象徴は、石川選手だった。

「サード石川昂弥」を軸として、春季キャンプからチーム作りは進んできた。

その打撃力、明るさ、そして若さ、残念ながらすぐに代わりになる選手はいなかった。

石川選手がチームを離れた後、交流戦最後の6連戦で、千葉ロッテマリーンズと北海道日本ハムファイターズに6連敗したことが、致命的だった。

背番号「2」の長期離脱こそ、立浪新監督が1年目で背負った最大の試練だった。

ベンチの歯車をかみ合わせる大切さ

「サンデードラゴンズ」より ©CBCテレビ

残り54試合となった後半戦へ。

先発陣に不安定さは残るが、鉄壁のリリーフ陣は健在である。

前半戦で決められなかった「二遊間」と「3番」を固定できるか。

幸い、課題のショートには2年目19歳の土田龍空選手が、その守備力をアピールして起用され続けている。

「新しい戦力をどんどん起用する」という監督方針は、貫いてもらいたい。

若い選手は時に“大化け”してチームに勢いを与えるからだ。

また、前半戦ここまでの戦いを見ていて、立浪監督の勝利に向かう“熱”と、選手たちのプレーの“技量”に微妙なズレを感じることが度々あった。

この歯車をかみ合わせることも大切だろう。戦うベンチに温度差は不要である。

首位を走る東京ヤクルトスワローズ以外のどのチームにも、クライマックスシリーズ出場のチャンスは十分にある。

ドラゴンズは、新型コロナの影響で前半戦最後の3連戦がなくなり、思いがけない時間もできた。

しっかりと戦略を練って、後半戦のスタートに向かってほしい。

ここからがいよいよ“立浪竜の逆襲”である。

【CBCテレビ特別解説委員・北辻利寿】

※中日ドラゴンズ検定1級公式認定者の筆者が“ファン目線”で執筆するドラゴンズ論説です。著書に『愛しのドラゴンズ!ファンとして歩んだ半世紀』『竜の逆襲  愛しのドラゴンズ!2』(ともに、ゆいぽおと刊)ほか。

著者プロフィール:北辻 利寿(きたつじ としなが)
1959年中日球場(現ナゴヤ球場)近くの名古屋市中川区生まれ。中日ドラゴンズへの限りなき愛を胸にCBC(中部日本放送)に入社。JNNウィーン特派員、報道部長、報道局長、論説室長などを経て現職。中日ドラゴンズ検定1級・2級・3級合格認定者。
著書に『愛しのドラゴンズ!ファンとして歩んだ半世紀』『竜の逆襲 愛しのドラゴンズ!2』(ゆいぽおと)など。