新潟県長岡市の栃尾地区で1871年に染色業から創業し、後に織物製造も手掛けていた『港屋』が、3月25日に新潟地方裁判所長岡支部から破産開始の決定を受けていたことが4月3日にわかりました。
民間の信用調査会社・東京商工リサーチによりますと、負債総額はおよそ2億6300万円で、新潟県内では141番目の新型コロナウイルス関連倒産とみられています。

染色した糸から織物を製造する「先染め」を主力としていましたが、1982年7月期の32億7100万円の売上計上をピークに、次第に国内消費の低迷や輸入品との競合などで2000年前後からは減収傾向が進み、2008年7月期以降は売上が低迷して赤字が慢性化していました。
新型コロナウイルス感染症の拡大以降は減収が一段と進み、2022年7月期の売上高は3億600万円余りにまで落ち込んでいます。

採算面で厳しい状況が続いていた中で『港屋』は2020年に、栃尾地区で唯一の糸染色業者であった「いずみ染工」に染色を委託しましたが、2023年5月にはその「いずみ染工」が破産。産地内での染色ができなくなり経営にも影響し、業務への支障が生じていました。
東京商工リサーチでは、『港屋』の倒産については海外製品に押されるなどの販売不振が直接の原因である一方で、こうした要素も追い打ちをかけたとみています。

東京商工リサーチ新潟支店の話では、新型コロナウイルス禍以降は、中国の人件費上昇と相まって繊維業界全体としては日本国内への回帰の動きもあるものの、なかなかピーク時の規模までには及んでいないということです。
こうした中で『港屋』は、従業員の雇用を維持して事業を継続すべく、2023年10月には同じ栃尾地区で糸加工販売を行っていた「シモムラ(石川県小松市)」に事業を譲渡。その後は倒産に向けて粛々と、今回の法的手続を進めていました。