2022年8月の記録的な大雨で青森県鰺ヶ沢町では川の氾濫と排水が追いつかない「内水氾濫」が起きて街の中心街が浸水被害を受けました。あれから1年が経過し、復興への歩みと課題を取材しました。



去年8月、鰺ヶ沢町で24時間の降水量が観測史上最大の202.5ミリを観測し、1か月分の雨がわずか1日で降りました。この雨で、雨水の排水が追いつかなくなり「内水氾濫」によって中心街が水に浸かって住宅や店舗など500棟以上が甚大な被害を受けました。JR鯵ヶ沢駅周辺の舞戸地区も浸水した場所です。大雨から1年がたった今、空地が目立つようになりました。

※鰺ヶ沢町舞戸地区 國谷正春会長
「この近辺だけでも1、2、3、4軒、駅のほうも入れると5軒くらいあるのかないや、6軒ですね」

こちらの空地には、かつて理髪店がありました。深く刻まれた被害の爪痕。店主の崎野勇さんは変わり果てた店の様子を目の当たりにし、当時84歳という年齢も考慮して大きな決断をしました。

※理容崎野 店主 崎野勇さん
「水が来なかったら仕事ができたのにと思って。ちょっと悲しくなってくる。もうちょっとやりたかったけどもう潮時でしょ」

崎野さんの店は取り壊され、今は空地となっています。舞戸地区では6軒の店舗が廃業し、去年8月の大雨は商店街の衰退を加速させました。

※鰺ヶ沢街舞戸地区 國谷正春会長
「この辺を見た通りシャッター街みたいになってしまったんですけれど(大雨被害は)だめ押しと言っていいのかそうゆう状態だと思います」

廃業する店があった一方、復興へ歩んだ店もありました。「會津めん浜さき」です。店主の土屋智則さんは当時、店の入口に土のうを積んで店内の浸水を防ごうとしましたが、少なくとも80センチ以上の水が流れ込みました。店のオープンからわずか8か月後の大雨被害。

※會津めん浜さき 店主 土屋智則さん
「まだまだ負けてられない」

店内の設備のほとんどを買い替えることになり、一時は臨時休業を余儀なくされましたが、去年9月には営業を再開し、店には活気が戻っています。

※會津めん浜さき 店主 土屋智則さん
「本当につらい1年でした。鰺ヶ沢も頑張って今の鯵ヶ沢町があると思います。町が復活するのを祈っています」

町を流れる中村川では壊れた護岸の修復と川の幅を広げる改修の工事がいまも続いています。工事は2026年度までの見込みで、完了すれば30年に1度と言われる大雨災害へも対応できる計画です。

※鰺ヶ沢町 平田衛町長
「町の被害総額が37億円以上にのぼり町としても甚大な災害だったと改めて思っていて非常に大きな被害が出たが犠牲者が一人も出なかったのが不幸中の幸い。災害の基本は最悪の事態を想定して被害をいかに抑えるか。そのために最大限努力していくような街づくりをしていきたい」

甚大な被害をもたらした大雨から1年。水害の対策とともに町の復興への歩みが続きます。