<センバツ高校野球 19日 1回戦 兵庫・阪神甲子園球場 青森山田対沖縄尚学>

青森山田は沖縄尚学に3対6で敗れ、全国制覇を目指した挑戦は初戦で幕を閉じた。青森テレビでは甲子園での取材を通して、春の全国制覇を目指した球児の思いと夏に再起をかける選手を紹介する。2人目は菊池伊眞主将。

「初戦ならではの硬さがあった」。菊池主将は淡々と語った。主将として初めて迎えた甲子園の舞台は、初戦で終わった。

「最初はキャプテンを断ったんです」
初戦を前にした取材中に菊池主将が口にした。練習では人一倍大きな声で仲間を鼓舞し、些細なミスに檄を飛ばした。個性豊かなメンバーを一つに束ねるとともに、ことあるごとに報道陣の前に立ち、チームの考えを伝える役割を担った。だからこそ、その発言は意外に思えた。

時は遡り、2024年8月21日。最高成績の4強入りを果たした前チームが京都国際との準決勝で敗れた。その直後、兜森監督は「新チームのキャプテンはこれから決める」と言及を避けた。ただ水面下では兜森監督と脇野部長からキャプテン打診の話を持ち出されていた。

菊池伊眞主将
「最後の1年で自分たちの代。のびのびやりたいという思いが一番強かったです」

即決とはならず、結局、新チーム最初の試合はキャプテン不在の中、行われた。

迷いや葛藤があった。

その時、全国舞台を経験した1学年上の先輩たちの言葉に心動かされた。
菊池伊眞主将
「(前チーム主将)橋場さんに『キャプテンを断った』と話したら『それはやべえぞ』と言われました(笑い)。でも、橋場さん以外にも去年の夏を経験している選手たちから、まとめる役割を放棄していたらチームとしての進歩がなくなるぞと言われて、自覚を持ってやらなきゃいけない立場なんだなと思わされました」

さらに思いを突き動かされた出来事として話したのが、1学年上でU18日本代表候補にも選ばれた吉川勇大選手からの言葉だった。

菊池伊眞主将
「『お前がやらなきゃチームが良くならないよ』と珍しく真面目なことを言ってきたんで……相当だなと思ってやるしかないなと思いました。真面目な話は久しぶりにしましたね」

主将の重要性や大変さは橋場前主将を近くで見てきたからこそ、痛いほどわかるものがあった。そして、選手と監督・コーチ陣の橋渡し役は並大抵なことではないことだとわかっている。

ただ信頼関係を築き上げた先輩に背中を押され、その覚悟を決めた。秋季大会中に兜森監督にその思いを伝えた。「自分しかいない」。その覚悟で突き進んできた。

19日の沖縄尚学戦では2回に犠打を成功し、チームプレーに徹する場面もありながら、7回には反撃ののろしを上げる左前安打を放ち、存在感をみせた。

しかし、残ったものは悔しさだけだった。

主将として感じた甲子園での経験値を夏にも活かす。
そして、再びこの地にもどってくる。そう誓った。