運転免許を持っていない。または、車を持っていない高齢者を助ける新たな取り組みが滑川市でスタートしました。キーワードは「自由乗降サービス」。交通弱者を支援する取り組みを取材しました。

滑川市の70代の男性です。自宅の前で待っていると、バスが止まりました。周囲にバス停はありません。

実はこれ。滑川市のコミュニティバスで、先月から試験的に始まった新たな公共交通サービスなんです。利用者は運行ルート上で交通量が少なく安全な場所であれば周囲にバス停がなくても手を上げるだけで、自由にバスに乗ることができます。

記者:「バス停ではありませんが…バスが止まりました。女性が乗り込みます」
■倍速■
記者:「ここでバス停です。バス停のかなり手前で女性は乗ることができました」

運賃は普段と変わらず一律100円。先月はおよそ5500人がバスに乗り、そのうち自由乗降を利用した人の数は、全体の5.7パーセントにあたる313人でした。まだ利用者数は多くないものの、実際に利用した人の評判は上々です。

自由乗降の利用者:
「今までバス停から5分近く歩いとったから、夏とか冬はやっぱり助かりますね」
利用者の女性:
「便利ですね。やっぱり運転ができないから助かっております」

65歳以上の高齢者が人口の3割を占める滑川市。県警によりますと、去年までの3年間で市内の415人が免許を返納。車や免許を持たない人の移動手段としてバスへのニーズが高まるなか、市では自由乗降サービスの試験運用をはじめました。

滑川市生活環境課 志鷹英治 係長:
「自宅からバス停が遠いという声が多く寄せられており、新たにバス停を増設してほしいという声もありました。そうした声に全て応えるのもなかなか難しいことから、自由乗降というものを導入することによって、そうした課題も解決できるものとして今回開始をさせていただきました」

自由乗降ができる区間は、コミュニティバスの運行ルート上で交通量の多い市街地を除いた山間部や海沿いのエリアに設定されました。朝や夜の時間帯は交通量が多くなり、安全性の観点から自由乗降はできません。

滑川市生活環境課 志鷹英治 係長:
「自由乗降することによって、バス停ではないところに停車することとなります。車の交通量が多ければ追突等の恐れもありますので、安全を第一に考えて市街地・中心部に関しては自由乗降の区間から除いて設定しました」

自由乗降が始まって1か月あまり。手を上げている利用者を見落とさないよう目を光らせてきた運転士。

運転士:「前は意思表示がまずかったり、危ないところに立っておられたり、今についてはある程度慣れて、大体決まった人ばっかりですから」

安全確保のため用水の近くや道幅の狭いところなど危ない場所で待たないよう声をかけるなど工夫を続けてきました。

自由乗降の利用者は、山間部から市街地へと続く運行ルートに住む高齢者が最も多く、市街地へ通院や日用品の買出しに訪れます。

さきほどの男性は1年前に車を手放し、今はバスを2日に1回のペースで利用しています。

男性:「暑いときとか荷物も重いし、今は家の前で全然違いますね」

帰りも降りたい場所を事前に運転手に伝えれば、希望の場所で降りられます。

男性:「たのんちゃ」
運転士:「おうわかったよ」

運転士:「はい、どうぞ」
男性:「ありがとう」

自由乗降は荷物の多い帰りのほうが人気で利用者全体の7割以上が降りるときだけ自由乗降を使います。

記者:「Q本当に家のまん前でしたね
男性:「そうですね助かりますね」

高齢者の新しい交通手段として期待が高まる自由乗降ですが、利用者の一部からはバスの本数や運行ルートに対して改善を求める声も上がっています。

滑川市では今後住民へのアンケートも行う予定で、1年間の試験運用を経て来年6月の本格運用を目指します。