東京ドーム16杯分の水ため込める遊水地
あらためて、この遊水地の計画についてまとめました。国が今計画を進めているのが、鏡石町、矢吹町、玉川村にまたがる遊水地の整備です。遊水地の総面積はおよそ350ヘクタールで、1500万から2000万立方メートルの水をため込むことができます。東京ドームで例えると、12杯から16杯分の水の量です。

なぜここまで広大な遊水地を整備するのでしょうか。
5年前に発生した台風19号による記録的豪雨では、県内の多くの地点で観測史上最大の降水量となり、この時の阿武隈川上流域の出水は6億立方メートル、これは東京ドームおよそ480杯分の水の量です。この出水により、阿武隈川とその支流の堤防合わせて31か所が決壊し、県内の広い範囲に大きな被害をもたらしました。
こうした被害を受け、阿武隈川が蛇行していて氾濫が起きやすいこの場所に遊水地を整備することで、このエリアだけでなく流域の郡山市や本宮市でも水害の被害を軽減することが期待されています。
一方で課題もあります。この遊水地の予定地には、3町村合わせておよそ150戸の住宅があり、移転の対象となっています。国は2028年度の遊水地の完成を目指していますが、予定地のうち買収の交渉が進んでいるのは地権者のおよそ3割に留まっているのが現状です。

そして、この予定地には広大な水田や畑も含まれています。国は整備後の遊水地の一部を農業用として利用するという試みを検討しているということですが、いずれにしても移転する住民が納得する形での遊水地の利活用が今後求められます。