来月1日に開かれるEU=ヨーロッパ連合の首脳会議、議題はウクライナへの財政支援です。加盟国で唯一反対してきたハンガリーでは先週、ある国民アンケートの結果が発表されました。その狙いとは何なのでしょうか?

ロシアのウクライナ侵攻開始からまもなく2年。課題となっているのが各国からの支援です。

去年末、EUは4年間でおよそ8兆円規模の支援を議論しましたが、先送りに…。全会一致が条件のなか、ハンガリーのオルバン首相が反対したためです。

ハンガリー オルバン首相
「ウクライナ支援で国民が割を食うのは絶対に避けなければならない」

ロシアのプーチン大統領とも親しく、強権的な政治姿勢で知られるオルバン首相は法の支配などをめぐり、たびたびヨーロッパ各国と対立。EUからの補助金は凍結されています。

そのハンガリーでは去年末に、ある国民アンケートが行われました。テーマは「国家の主権を守るために」。ウクライナ支援などEUの政策への賛否を問うものです。

記者
「これは政府がつくったアンケートに関する看板なんですが、EUのフォンデアライエン委員長の写真とともに国民へのメッセージが書かれています。“彼女たちの言いなりにはならないようにしましょう”という意味なんだそうです」

市民は…。

政権支持者
「(EUに反対の)政府の意見に同意すると書きました」
「EUはハンガリーを植民地だと思っているんですよ」

政府が発表した集計結果によると、全ての質問で回答者の97%以上がEUの方針に異議を唱える政府の意見に賛同していました。

専門家はメディアの影響が大きいと話します。

ハンガリー政治資本研究所 ルドルフ・ベルケシュ氏
「政権はハンガリーメディアの75~80%を支配しています。自分たちが唯一、有能な政権であるというイメージを作っています」

また、政権は福祉制度を支持層に集中させて政治基盤を固める一方、苦しい経済状況は他国に責任を転嫁していると分析します。

ハンガリー政治資本研究所 ルドルフ・ベルケシュ氏
「(アンケートは)政府の正当性を証明するための道具です」

一方、政権を支持しない人は。

政権を支持しない人
「(アンケートは)誇張や誤解を招く質問ばかりで、やりすぎです。答えられませんよ」

来月1日に開かれるEU首脳会議では、再びウクライナへの財政支援が議論されます。

ハンガリーは引き続き、“国民の声”を後ろ盾にEUに揺さぶりをかけ、凍結されている補助金を引き出す材料にするとみられていて、議論の行方が注目されます。