日経平均上昇の中、新NISA ガチホか利確か?

――2024年から新NISA制度も始まったので、参入した人も多い。株高で喜んでいる?

ニッセイ基礎研究所 井出真吾氏:
「やった!」と思う人もいるかと思うし、逆にこんなに急に急上昇して、急に落ちるかもしれないと、高所恐怖症みたいに不安になっている人もいるかもしれないです。

――そんな今、特に2024年1月に参入した人が、利益を確定させようか迷っている。ガチでホールド(ガチホ)すべきか、利益を確定(利確)すべきなのか。

ニッセイ基礎研究所 井出真吾氏:
ここまで上がると、多いと思う。投資を始めたのが短期的に儲けようという目的ではなく、長期的に銀行に置いておくよりいいとか、最初にどういう狙い、目的で投資を始めたのかということにより、その後の行動も初志貫徹した方がよい。短期投資の方は、今売るか自由だが、長期投資の方はもう「ガチホ」でいいと思う。

ニッセイ基礎研究所 井出真吾氏:
データを見ると、オールカントリー、オルカン。あとS&P500。2012年の頭を100として指数化した。全部で12年間あるが、前半後半の6年間ずつに分けて、何倍になったとか、いくら増えたかを計算すると、オルカンは前半の6年間、2012年から2017年。倍率でいうと元本100万円が2.9倍、すなわち増えた額は193万円。100万円が300万円近くなった。ここで上がったところで売るかどうか。3倍近くになったから、もう売ろうかと。しかしその後、後半の6年間は2倍にしか増えなかった。倍率は2.9倍から2倍にだいぶ下がったが、金額にすると300万円増えている。S&P500の方はもっと顕著で前半の6年間は3.5倍になった。金額としては253万円増えたので、100万円が353万円になった。ところが後半の6年間は2.2倍にしかならなかった。でも金額にしたら500万円増えた。倍率は下がっても、金額は大きく増えた。これがまさに複利効果なのです。利息がまた利息を生む。ある程度上がったところで利益確定売りして現金にしたら、その後の長い期間の値上がりを全く手にできない。機会損失です。だから、株価が2024年の年明けみたいにぐっと上昇したからといって、長期投資の方は踊らされずに、すぐに売ってしまうのではなく、持ち続ける。目先1回下がるかもしれないが、「10年後20年後の株価は今より高いはず、銀行に置いておくよりいい」ぐらいの感覚でいればいいと思います。

――過去のデータだが、S&Pに関しては12年経ったら、元本100万円が900万円近くになる。

ニッセイ基礎研究所 井出真吾氏:
今後も9倍になるという保証はないが、それでも何倍かには増えてくれるはず。銀行に100万円を定期預金で30年間置いたら、定期預金の利息はほぼ0.2%。すると30年後にもらえる利息が4万8000円。100万円が104万8000円になる。(対してS&Pは)9倍に膨れ上がっていく。この通りになるわけでなく、下がるかもしれないし、もっと上がるかもしれない。確定していないのが株の難しさだが、いずれにしても長期間では上がっていくと考えてよいと思う。

ニッセイ基礎研究所 井出真吾氏:
この先どう考えたらいいかということを見ていきたいと思う。日経平均が上がったり下がったりしている。(特に)下がったところには、坂道があり、ここで、大体下げ止まっている。何かというと、株主資本、いわゆるPBR(株価純資産倍率)1倍の水準。すなわち、株価というのは時価。この坂道は簿価の方、帳簿上の企業の価値。簿価と時価が一致するところまで下がると株価は下げ止まる。それより株価が下がってくると割安感が出てくる。それ以上売る人が減って、「もう割安だ」と買う人が出てくる。株主資本はどういうものかというと企業が決算をしたら、配当を払って残りは株主資本に積み上げていく。利益剰余金、これがいわゆる内部留保。長期的にはこの坂道は右上がり。時々、リーマン・ショックのときやチャイナショックみたいに、多くの企業が赤字に陥った年は坂道が一時的に右下がりになっているが、また黒字回復すると、右上がり。だから長期的には右上がり。
今後も緩やかな右上がりが続く。つまり株価の下値メドの水準が少しずつ切り上がっていくから、日々乱高下したとしても徐々に上がっていくのが自然だと思っている。来週、来月の株価はどうかというのはさておき、長い目で見れば今の株価よりも、ほぼ間違いなく高いと考えていいと思う。だから「ガチホ」。

――利益確定(利確)で目先の現金より、ずっと持っておくべき(ガチホ)だと?

ニッセイ基礎研究所 井出真吾氏:
S&P500ベースでみると、ITバブル崩壊後やリーマン・ショックのときも大体この下値メドのところで止まっている。アメリカの企業は収益力がずっと高く、日本企業の倍ぐらいある。株価もかなり上にいっているが、下値メドというときにはこういう考え方が一定程度機能する。S&P500もこの坂道は緩やかに右上がり。だから株価指数はそういうものだと思っていい。

――本日も質問が届いています。「株価の動きに為替の変動はどう影響するのか」ということですが、解説をお願いします。

ニッセイ基礎研究所 井出真吾氏:
まず円安に動くと、日本の輸出企業の採算が改善する。結果的に日本株が上昇するというのが基本的な仕組み・構図で、日経平均やTOPIXの上昇に繋がる。実は2024年の年明け以降も株価が円安を背景に上昇した。なぜ円安に動いたかというと、日銀などの金融政策もあるが、一つは新NISAが影響している。新NISAは多くの人が、オルカンやS&P500など外国株を買いにいっている。その外国株を買うときに「円売りドル買い」が起きる。それで円安が進んだ。日本企業は輸出で稼いでいる部分が大きいので、輸出企業の株価が上がって、日経平均・TOPIXも押し上げた。「日本株は買わずに、外国株を買おう」と言っていた人たちが日本株を押し上げてくれるということだから、面白いというか皮肉。だからある程度分散しておくことが大事だと思う。なので外国株メインでいいとは思うが、外国株1本足打法にするよりは、日本株も少し持っておくぐらいがよいと思う。

――最後に投資のプロの井出さんから相場の格言です。「稲妻が輝く瞬間に市場に居合わせなければならない」。これはどういう意味でしょう。

ニッセイ基礎研究所 井出真吾氏:
稲妻が輝く瞬間というのは、大きな上げ相場のときのことを言う。まさに2024年の年明け以降みたいなことをいう。この稲妻が輝く瞬間を逃すと、最終的に得られるリターンがしょぼいものになるよと。大相場は、たまにしか来ない。利益確定するのもいいが、大相場が来たときに現金だったら悲しい。大きく下がるときもあるが、やはり大相場を逃がさないために、常に市場に参加し続ける。これが非常に大事。いつ稲妻が光るかわからない。正確に予測できない。いつ大きく下がるかも予測できないが、長期的には株価指数は、ゆっくりゆっくり上がっていくから、参加し続けていれば、結果的に利益も得られるという話です。