“ピンポイント”はなぜ重要?

それでもSLIMは、これまでの「降りられる場所に降りる」から「降りたい場所に降りる」という、月面探査の歴史の新たな扉を開いたのです。

なぜ、ピンポイント着陸が重要かというと、月の水を調べるのに有利になるからなのです。水は、水素燃料や、呼吸用の酸素にも活用できると見込まれています。水は月では氷状になっているとみられ、一年中、日が当たらない月の北極・南極などごく限られたエリアにあると予測されています。月の南極の写真を見てみます。青い色は氷の分布を示しています。探査機は、太陽光で動くので、そのすぐ近くの“ギリギリ日光が当たる明るいところ”に降りないといけないのです。

“早いもの勝ち?”月の資源開発

月には、水のほか鉄、チタンなどの鉱物資源が眠っているとみられていますが、その扱いについて明確な取り決めはなく、「早い者勝ち」となる可能性も指摘されています。

また、アメリカが主導し、日本も参加する「アルテミス計画」では、2026年に、人間を再び月に送り込むことや、月に拠点を建設し、人類の持続的な活動を目指しています。民間企業も含め、「月開発競争」は、ますます加速しそうです。

(「サンデーモーニング」2024年1月28日放送より)