今年は「オリンピックイヤー」。高知県勢では、レスリング・櫻井つぐみ選手に“金メダル”の期待がかかっています。“夢の舞台”に挑むまでの道のりは、決して“平坦”ではありませんでした。だからこそ抱く「思い」や、今年にかける「決意」を聞きました。

2023年末、高知市のホテルで、レスリング・櫻井つぐみ選手(香南市出身)の「激励会」が開かれました。
櫻井選手は、20203年9月の世界選手権で、女子57キロ級のパリオリンピック代表に内定し、3大会連続優勝も果たしました。

快挙を成し遂げた櫻井選手のため、後援会が開いた「激励会」には、大勢の人が詰めかけ、熱いエールを送りました。

■櫻井つぐみ選手
「オリンピックに行くためには、たくさんの人の支えがなければ行くことができなくて、小さい時から本当にたくさんの人に支えてもらってここまで来ることができました。本当にありがとうございます」

櫻井選手がレスリングを始めたのは、3歳の時。父・優史さんが立ち上げた「高知レスリングクラブ」で、幼い頃から競技に打ち込んできました。テレビ高知では、小学6年生の時、2013年に櫻井選手を取材していましたが、当時から、将来の目標について、「(夢は)オリンピックで優勝して、何連覇もすることです!」と話していました。

その後、中学時代は全国大会で3連覇も果たしましたが、高校時代は、表彰台に上がれない時期もありました。

■櫻井つぐみ選手
「高校の時は特に、結果があまり出なくて…『高校でも勝てないのに、オリンピックで勝てるわけがない』と思っていた。でも、大学に入ってから、全日本とか世界で勝っていくにつれて、やっぱり『オリンピックに出たい、優勝したい』と思うようになって…。練習もたくさんしたし、この時があったからこそ、今があるのかなって思います」
そうして実力をつけた櫻井選手ですが、今回オリンピックが決まるまでの道のりは、決して“平坦”ではありませんでした。

パリオリンピックの最初の国内予選、おととしの「全日本選手権」。優勝すれば代表入りへ大きく近づくこの大会で、櫻井選手は、ライバル・南條早映選手に敗れてしまったのです。
世代トップを走ってきた櫻井選手にとって大学入学後“初めての敗北”。オリンピック出場には次の大会で優勝するしかなく、早くも、後がなくなりました。

■櫻井つぐみ選手
「(オリンピック予選が)本当に『負けられない戦い』になって…。自分自身も『甘い部分』があって、自分の取り組みを見直して…。次の予選までは『今までで一番練習してきた』って思ったし、『相手よりも絶対、自分の方が練習した』っていう気持ちで挑むことができて…」
そうして迎えた2023年6月の「全日本選抜選手権」、決勝の相手は、あの南條早映選手。
試合は終盤まで2-2の同点となり、このままポイントが奪えなければ負けるという苦しい展開でしたが、試合終了1秒前のテイクダウンで同点に追いつき、最後に得点した櫻井選手が勝利!執念の“大逆転”で優勝しました!


この結果、オリンピックへと繋がる世界選手権代表の座は、「全日本」王者の南條選手、「全日本選抜」王者の櫻井選手が、「プレーオフ」で争うことに。

そして迎えた、2023年7月のプレーオフ。この試合でも櫻井選手は、前半で0-2と南條選手にリードを許す苦しい展開となります。このまま負けるかと思われた試合終了間際、櫻井選手は「残り5秒」から返し技を仕掛けます。
この技で南條選手の体が90度以上反っていれば、櫻井選手が2-2の同点に追いつき、さらに最後に得点した櫻井選手の勝利が決まりますが…

ビデオ判定の結果、櫻井選手の勝利が確定し、“崖っぷち”からの大逆転で世界選手権代表の座を勝ち取りました!

そうして出場した世界選手権で、オリンピック代表内定と3大会連続優勝を決めましたが、その原動力となったのは、最初の国内予選で「負けたこと」でした。

■櫻井つぐみ選手
「(2022年の全日本選手権で)『負けたからこそ、オリンピックを決められたのかな』って思います。あのとき負けて、その後しっかり、いろんな人にサポートしてもらいながら立て直すことができて、それが『今の自分の強さ』に繋がっていると思います」
レスリングのレベルが高い日本で、激戦を勝ち抜いてきた櫻井選手。階級の“世界王者”としてオリンピックに挑みますが、「まだまだ課題もある」といいます。

■櫻井つぐみ選手
「もっと『圧倒的な強さ』が必要だなと思っていて…。世界チャンピオンではあるんですけど、『ギリギリの試合』もあったし、まだまだ『取られそうな部分』もある。そういう『自分の弱さ』を少しずつなくしていって、オリンピックに出場したときには『圧倒的に勝てる強さ』をつけていたいと思います」
いよいよ迎えた、“オリンピックイヤー”の2024年。地元・高知の期待も、高まっています。

■櫻井つぐみ後援会 志磨村俊二 会長(野市中学校時代の校長)
「すごくプレッシャーもあると思うんですけど、自分を信じて、しっかり頑張ってやってほしいと思います。『必ず金メダルを獲れる』と信じています」

■澤本隆司さん(野市中学校3年時の担任)
「『粘り』と『最後まで諦めない』ことが、すごく心に残っていますので、オリンピックでもそういう形で頑張ってもらったらと思います」
そして、激励会に招かれた、櫻井選手が在学する育英大学のチームスタッフも、期待に応えるべく意気込みます。

■育英大学レスリング部 上野裕次郎コーチ
「つぐみが最後の最後で力を出せるのも、『こういう地元の応援があって、力が出るんだな』と思って…羨ましいというか“愛”を感じました」

■育英大学レスリング部 柳川美麿 監督
「高知県民が望んでいるのは『県勢選手92年ぶりの金メダル』だと思いますが、高知県だけじゃなくて、日本の中でも勝たなくちゃいけない選手だと思うので、そういった意味では『ともに金メダルを獲れるよう』頑張りたいと思います」


そして、幼少期から寄り添い続けた、父・優史さんは…
■父・櫻井優史さん
「『高知県からオリンピック選手を出したい』と思って頑張ってきたんですけど、『金メダルを高知県に届けたい』と、より強く思うようになりました。我々ができることは本当に限られているんですけど、つぐみに、あともうひと頑張りしてもらって、高知県に金メダルをお届けできるように頑張ってもらえたらなと思います」

「ここまで来られたのは父のおかげ」と話す櫻井選手。パリでは、“父のため”にも、金メダルを目指します!

■櫻井つぐみ選手
「(父は)ずっと一生懸命指導してくれたし、ずっと『自分(つぐみ)がオリンピック』っていうのを言っていて、『そのために』っていうのをずっと考えてくれていました。だから、今までレスリングを教えてくれた分『恩返し』というか『結果で返せているのかな』って思うんですけど…」

■櫻井つぐみ選手
「やっぱり、最後の『オリンピック』が1番の大きな舞台なので、そこで1番いい色の『金メダル』を、現地で勝っている姿を見せられるように、頑張りたいなと思います」














