流行語大賞にノミネートするなど2023年に大きな話題になった「生成AI」。様々な分野で実用化が進められる一方、特に漫画業界ではAIの使用をめぐってはいまだ賛否が別れている。超人気作品「カイジ」シリーズの作者・福本伸行さんがインタビューに応じ、自身の考えを明かしてくれた。(TBS「報道の日 2023」ディレクター 市川正峻)
「漫画家そのものがいなくなることは無い」
ーまず率直に、ご自身の作品で「生成AI」を使ってみたいと考えたことはありますか?

漫画家・福本伸行さん
「今のところ考えていなかったんですけど、AIはアイディアを出してくれるのが得意だと聞きました。僕に考えつかないような切り口を提案してくれるなら、『絶対に使わない』というわけでは無いだろうなと思いますね」
福本さんは「AIについてそこまで明るくない」と前置きをしながらも、否定的な見方はしていないと話す。
福本さん
「アシスタントとしてAIを使ったとしても、ちゃんと作品を面白いものにするという最終責任は僕にあるので、そういう意味で、作品にAIを使用したとしても、読者の受け取りは変わらないのではないかと思います」

“AIに仕事が奪われるのではー” 実際に、そうした不安の声もクリエーターからはあがっている。AIがすべての作業を行うという未来は有り得るのだろうか。
福本さん
「まだだいぶ先までAIをコントロールする『人間』が必要なのではないかというのが一つ。もう一つ。仮にAIの方が面白いストーリーができてしまう、漫画家の描くものの方がつまらないとなったとしても、人間には何かこだわりがあったり、クセがあるんですよ。そのクセが好きで、その漫画を読みたいという読者は必ずいるはずですから。作者と触れ合いたい、魂と魂を感じ合いたいという読者の気持ちは絶対にあるから、漫画家という職業は無くなりません。AIがどんなに進歩しても。」
完璧なものばかりを人間は求めていないと福本さんは考える。
福本さん
「人間の良いところは、至らないところがいいんですよ。ちょっと失敗するところもストーリーに入っている。あの時こうしておけば良かったというのが起こるんですけど、そういうのも含めて人間なんで」
2023年、生成AIを使ったある「名作」の復活が話題になった。