AI×メディア UAEの最新事情

その他にも、会場のブースで紹介されていたのは「AIニュースシステム」という原稿作成ツール。「What」「When」「Where」の3要素を入力すると、わずか数秒で原稿が完成するというもの。

試しに記者が「Car accident・yesterday・Tokyo」と入力してみると、「不幸な事故は東京の人通りの多い中心部で起こり、街は騒然とした…これまでに死亡者は報告されていないものの、数名のけが人が出ていて…」と、日本語にして1分~1分半くらいの長さの原稿が出力された。

『AIニュースシステム』の原稿作成

一般的な報道機関の取材では、事件や事故などの出来事を記者が取材し、記事を執筆。最終的にデスクや編集長がチェックと修正を加えて公開される。

システムを説明してくれた担当者によると「AIが下書き→人がチェックして加筆・修正」という使い方を想定していて、人間の判断を介在させることを前提としたシステムではあるというが、AIの力を借りることで、人がかける時間の節約になり、効率化につながるため、利用にはかなり前向きな反応であるそうだ。

今のところ課題や懸念点は特にないとも話していた。しかし、想定していない文章を書かれるリスクも大きく、かえって確認する作業に時間を要するようにも感じた。

現在、UAE国営通信社・WAMのニュースアプリでは「WAM Intelligent」という、入力したワードに関連するニュースを自動回答してくれる「AIチャットボット」を採用しているそうだ。

担当者は、実際のニュース速報などで「AI記者リポート」のような技術が有効活用できる見方がある一方、使い方を間違えれば「フェイク動画」になりうる危険性を伝えたいと話す。

記者が試したように、生成AIを使えば、特別な技術がなくても、誰もが簡単に動画や音声などを作り出せてしまう時代。

AIは私たちの生活をより便利に変えようとする一方で、フェイク動画の作成や拡散にも使用されてしまっているのだ。

日本でも、生成AIを使ったとされる岸田総理の偽の動画がSNS上で拡散され、波紋を呼んだりと、実際に国内外で対策が急務になっている。

そのような中で、AIの悪用などを防ぐにはどうすべきなのか?

ブースの技術担当者は「若い世代への教育が重要で、そのためにはUAEでは政府が彼らに何を見せるか規制をするべきだ」と話していた。