毎月の給料から投資=毎月投資。24年1月一括は慎重に
――ますます一括投資の方がいいのかなと思ってしまいますが、いくつかの年は毎月投資の方が上回ったのですね。
ニッセイ基礎研究所 井出真吾氏:
そもそもなぜこんなに一括投資の勝率が高くなったかを株価指数のグラフで振り返りたいと思います。

TOPIXはちょっと置いておいて、オルカンとS&P500は基本的に右肩上がりだったので、1月にまとめて投資した方がその後の値上がりをフルに享受できたと。年の後半に買った分は値上がり益があまりもらえなかったという単純な話です。ですから、12か月の平均の株価よりも1月の株価の方が低かった年は一括投資した方が良かったし、そうではない年は分散投資した方がよかったよと。
毎月投資の方が安心で精神衛生上はいいと思います。その代わり少なくとも過去のデータで見ると毎月投資の方がリターンはちょっと低かった。これは安心料です。保険料みたいなものです。
逆に言うと、1月に一括投資をした人はものすごいリスクを取っているわけです。リスクを取った対価としてリターンも少し高かったよねと。どちらがいい悪いではなくて、どういうリスクを自分が取りたいか。どちらでもいいです。
――過去24年のうちに毎月投資の方が良かった年もあるのですね。

ニッセイ基礎研究所 井出真吾氏:
はい。毎月投資の方がよかった年が2002年と2008年でした。どちらの年も、1月の株価が一番高くて、その後株価がダラダラ下がってきた。確かにこういう年は毎月投資、いわゆるドルコスト平均法がうまくいくのです。もしくは株価が横ばいのときはうまくいきます。ドルコスト平均法が過去24年間で成功した数少ない例だったということです。
そうなると24年はどうか。来年は前半に株価リスクがあると思うので、来年に関しては1月一括投資は正直あまりおすすめはできないと思っています。自分自身も一括投資はちょっとやめておこうかなと思っています。
――一括投資するにしても、ある程度時期は考えたほうがいい?
ニッセイ基礎研究所 井出真吾氏:
そうですね。少なくともFRBの利下げ開始というのがもう少し見えてこないことにはマーケットが落ち着きませんし、日銀もマイナス金利解除が1月なのか4月なのか今全くわからない。そういう状況でタイミングリスクを取るのは勇気のいる話です。
――リスクを意識したりするのが面倒だなと思う人はシンプルに積み立てる方がいいのではないかと。
ニッセイ基礎研究所 井出真吾氏:
そうです。リスクというか労力をかけたくないという人もいらっしゃいますよね。そういう方は難しく考えずに毎月投資でいいと思いますし、もっと言うとそんなまとまった投資資金ないよと。毎月のお給料から投資するのだから結果的に積立投資、これが現実的です。積立投資も否定されるものではないし、一括投資を否定する必要も全くないと。リスクの取り方が違うだけということです。

――最後に投資のプロの井手さんから相場の格言です。「掉尾(とうび)の一振」。これはどういう意味でしょう。
ニッセイ基礎研究所 井出真吾氏:
年末によく使われる格言なのですが、年末の取引最終日、大納会に向けて株価が上昇する、年末に起きる株高のことです。今年あるかどうかわかりませんが、29日が取引最終日になりますので、株価がどうなるか。
――過去のデータを見ると年内最後の取引日に上がる傾向にあるということですか。
ニッセイ基礎研究所 井出真吾氏:
必ずということではありませんが、そういう年がちょくちょくあったので。「また来年も期待できるよね」という高揚感で1年を終える。
――株価は投資家の皆さんの感情で動くものなのですか。
ニッセイ基礎研究所 井出真吾氏:
短期は感情で動きます。長期はファンダメンタルズですが。
――「掉尾の一振」があるかどうか、気になるところです。
ニッセイ基礎研究所 井出真吾氏:
そうですね。