ロシアによるウクライナ侵攻から4か月あまり。
母国の平和を願って懸命に戦い続けるウクライナのアスリート達がいる。

その一人が陸上・女子走高跳のヤロスラワ・マフチク(20)。
2019年カタールのドーハで行われた世界陸上。彼女が描いたのは、希望のアーチだった。
   
2m04を成功させ自己ベストを4センチ更新しての銀メダル。18歳と11日でのメダル獲得は、世界陸上・女子走高跳の史上最年少記録となった。

しかし、今年の2月24日。ロシア軍によるウクライナ侵攻で目の前の世界は一変した。
その時、ウクライナの自宅にいたマフチクは、当時の状況についてこう語る。

「自宅を出た際にはパスポートと少しの現金だけ。生活を続けられるか、将来はどうなるのか・・・。最悪の気持ちでした」

命の危険に怯える日々の中、マフチクは母国のためにできることを考えた。

「難しいことですが、私の役割は競技に出続けることだと分かっています。陸上競技で母国を助けるんだという気持ちでした」


試合に出場を続けるマフチク選手(写真はダイヤモンドリーグストックホルム/6月30日)

ウクライナに、光を。その3週間後、3月にセルビアで行われた世界室内陸上。

「戦争までは良い準備ができていましたし、ウクライナという国とその国民は強いんだということを見せたかったですし競技を続ける中でこうやってメディアとも話さなければと感じたのです。それでセルビア行きを決めました」

マフチクは、今シーズン室内世界最高記録となる2m02で優勝した。

「でも私にとって精神的に非常にキツイ状態でした。試技の前には寝転がったりして無の状態になって、“跳ぶぞ”と気持ちを切り替えるのですが、その大会では“ウクライナはどういう状況なんだろう”と考えました。ウクライナの人々に笑顔になってもらいたかったのです。1日中悪いニュースしかありませんから。良いニュースを届けられて、多くの人がメッセージをくれました。『今後も跳び続けて欲しい』『あなたのニュースで私たちは笑顔になれた』とか」

その後も世界最高峰の陸上競技ツアー「ダイヤモンドリーグ」に出場し4戦3勝(7月1日時点)、今季世界ランキング1位(6月26日時点)に君臨している。
    
ウクライナの平和を願い、人々の笑顔を祈り、マフチクは希望のアーチを空に描き続ける。

「すべてはウクライナ人、国のために捧げます。ウクライナ人にとって大変な時期ですが私たちは競技場から国を守り続けます」

マフチクは今月16日に開幕する世界陸上に出場予定。
女子走高跳の予選は日本時間17日、決勝は同20日に行われる。

■ヤロスラワ・マフチク(ウクライナ・走高跳)
2001年9月19日生まれ、20歳。2021年東京五輪では2m00で銅メダル。2019年世界陸上ドーハで自己ベストを4cm更新する2m04に成功し銀メダルを獲得。