いろいろな難題に挑戦し続けている岸田政権。こども・子育て支援、防衛力の抜本的な強化、エネルギー政策の転換、それに追い打ちをかけるように物価高。

その対策として岸田総理は経済対策を打ち出し、補正予算案を組んだが、はたして効果は出るのだろうか。税収増の国民への還元として所得税減税などを打ち出し、可処分所得増を訴えるが、先行きの負担増を懸念する国民の受けは悪い。

岸田総理の意図、言葉はどうして伝わらないのか、政策通として知られる田村憲久元厚生労働大臣(自民党政調会長代行)に話を聞いた。(聞き手:川戸恵子)

「今流れが前提として悪い」賃上げを早くやらねば、国民の理解はない

ーー補正予算の審議が始まりましたが、毎日毎日、岸田さん「タジタジ」という感じですね?

田村憲久 元厚生労働大臣
うまく岸田総理がおっしゃっておられることが国民に伝わらないっていう部分もあるのだと思います。やっぱり、今流れが前提として悪いのですね。それは何かって言うと、実質賃金がずっとマイナスが続いているので、そういう意味では物価を上がる社会を作ると言ってきたのですけども、これは需要が引っ張っている物価高じゃなくて、どちらかというと供給側、例えばエネルギーだとか資源だとかそういうものが上がって、それで物価が上がっているので、そういう意味で賃金の方が物価より高いという状況になっていないっていうのが続いているのが、根本的に底にあるのです。

その上でいろんな不祥事が起こりますから、国民の皆様方がお叱りになられるということなので、やっぱり根本論、いつも岸田総理がおっしゃっておられますけど、賃金をちゃんと早く上げていくっていうことをやらないとなかなか国民の皆様方にご理解いただけないのかなと思いますね。

「還元」は「お返し」と言う意味 ”適切なひとつの経済政策”

ーー経済対策の中で所得税の減税の話がポッと出てきたが、これが私達には非常にわかりにくいのです。総理は「税金を還元する」とおっしゃっていますが、世耕参院幹事長が「還元なんてことはわかりにくい」と。その後も減税をめぐる発言がたくさん出てきました。その辺はいかがですか?

田村憲久 元厚生労働大臣
低所得者世帯向けの支援っていうのは、所得税減税とは違っているので、これに関しては給付金が中心になって、やはり物価が上がっているときは低所得者の方ほど厳しいので、それはもう早くやらなきゃいけないっていうので、この補正中心にこういうものを組んで、その方々に何とか厳しい生活を少しでもやわらげていただきたいというので、やるのですよね。それと同時に賃金を上げなきゃならないって言いますが、すぐには上がっていかないっていうところが、なかなか経済のメカニズムがありますので、まずは所得税減税という形で、可処分所得をしっかり増やしていただいて。

今ちょうど消費が悪いじゃないですか。4月-6月はプラス成長だったのが、この7月-9月でマイナス成長になっていますが、そもそも民間消費とそれから民間の設備、国内設備投資はどっちもマイナスなのです。だから元々国内はあまり良くなかったんです。

そこでやっぱり内需を喚起しなきゃいけないので、所得税減税というようなメッセージを出させていただいて、可処分所得を増やしていただくと。財源の話なのですが、「還元」っていう言葉が「お返し」っていう意味なのだと思うのです、私は。なぜかというと、それだけ税収が増えているのですよ。

昨年の税収って、当初予算を組みますよね、そのときに税収見込みってあるじゃないですか、それと決算が本当の数字ですよね、そこに昨年約6兆円上振れしているのです。その前の年は10兆円分上振れしているのです。2年で16兆円上振れしているのですね、全体で。

その中から所得税を中心に、住民税もそうですけれどもお返しをさせていただこうということで、そういう意味からすると好循環をつくるために、ただただお返しするのではなくって、今ちょうど民間消費が弱いし、まだ賃金の方が物価よりも上がっていないので、その間は「お返し」をさせていただいて、物を買う力をつけていただいて内需を喚起しようという意味でやるということでありますから、そういう意味では適切なひとつの経済政策ではあると私は思いますね。