東日本実業団駅伝が11月3日、埼玉県庁をスタートし、熊谷スポーツ文化公園陸上競技場にフィニッシュする7区間76.9kmで行われる。上位12チームが来年元旦のニューイヤー駅伝出場権を得る。それに加え今年は13位以下のチームでも、10月15日に行われたMGC(マラソン・グランドチャンピオンシップ。パリ五輪代表3枠のうち2人が決定)と開催時期が近いため、MGC出場資格選手を擁するチームは完走を条件にニューイヤー駅伝出場資格を得られる。

4連覇を狙う富士通と、全国大会のニューイヤー駅伝2連勝中のHondaが2強と言われている。富士通は今夏の世界陸上ブダペスト5000m代表の塩尻和也(26)ら、トラックの日本代表経験選手を中心に強力な布陣で臨む。

マラソン勢を起用しなくても豪華メンバー

富士通の高橋健一監督が4連覇に意欲的だ。

「今、組めるベストメンバーで臨みます。勝つチャンスがあるのなら勝ちたい」

マラソン日本記録保持者の鈴木健吾(28)らMGCに出場した3人は起用しない。東京五輪マラソン代表だった中村匠吾(31)も、調子が上がってきたが無理はさせない予定だ。

それでも富士通が戦力ダウンするイメージはない。
今季好調だった塩澤稀夕(24)が股関節周りの故障で起用できないが、今夏の世界陸上代表の塩尻に加え坂東悠汰(26)、松枝博輝(30)、潰滝大記(30)と、4人のトラック種目日本代表経験選手が出場する豪華メンバーとなる。

塩尻は2月の日本選手権クロスカントリー優勝、5月のゴールデンゲームズinのべおか10000m優勝、6月の日本選手権5000m優勝と、国内試合はタイトルを取り続けた。そして7月のアジア選手権(タイ・バンコク開催)5000m2位、8月の世界陸上5000m予選1組18位、9月のアジア大会10000m5位と国際大会を3連戦した。

松枝と坂東は21年東京五輪5000m代表、潰滝は17年世界陸上3000m障害代表だった。さらに優勝した昨年4区の横手健(30)がメンバー入りする予定だ。新人では昨年の関東インカレ10000m優勝の伊豫田達弥(23)がメンバー入りする可能性がある。

最長区間候補は塩尻と坂東 4区までにトップに立ちたい富士通

東日本実業団駅伝の各区間の距離は以下の通り。

第1区 11.6km 埼玉県庁~宮原小学校前
第2区 8.0km ~ マメトラショッピングセンター前
第3区 16.5km ~JR行田駅入口
第4区 9.5km ~大里農林振興センター前
第5区 7.8km ~ JR深谷駅前
第6区 10.6km ~ Honda cars前
第7区 12.9km ~熊谷スポーツ文化公園陸上競技場

前回は1区・坂東、2区・B.キメリ(28)、3区・塩尻、4区・横手、5区・松枝、6区・塩澤、7区・飯田貴之(24)のオーダーで、2位のHondaに40秒差を付けた。今回はMGCに出場した飯田と、故障で準備不足の塩澤は起用しない。

塩尻は「ニューイヤー駅伝では最長区間の2区(21.9km)を走って欲しい選手」(高橋監督)だが、東日本予選は「国際大会に連続出場したことも考慮する」(同監督)という。3区が塩尻でなければ、ニューイヤー駅伝3区(15.4km)候補の坂東に任せるかもしれない。

その場合はトラックの実績豊かな松枝と塩尻が1区と4区を分担する。前回4区でトップに立った横手が夏の練習が不足しているため、潰滝や新人の伊豫田らと5区以降に回る可能性が高い。

いずれにしても富士通としては、トラックの代表経験3選手を投入する4区までにはトップに立ちたい。

「東日本予選で3連勝していますが、ニューイヤー駅伝は2年連続で負けています。では東日本が2位でいいかといえば、3年前のように東日本予選で勝って勢いをつけたい」(高橋監督)

富士通は東日本実業団駅伝4連覇にこだわる。それを3年ぶりのニューイヤー駅伝優勝につなげていく。

(TEXT by 寺田辰朗 /フリーライター)