将来の妊娠や出産に備えるための卵子凍結。東京都は最大30万円となる助成を先週から実質的に始め、これに都の想定以上の人が関心を寄せています。卵子凍結は女性がライフプランを考えるうえで、新たな選択肢の一つとなるのでしょうか。

“将来 子どもを生む可能性広げたい” 経済的負担 都が助成

吉田楓さん
「まずは留学に行って、それからキャリアとプライベートのことを考えたいと思っています」

吉田楓さん、30歳。現在はコンサルティング会社に勤めていますが、2024年から大学院に留学するの控え、2023年7月、卵子凍結を行いました。

吉田楓さん 
「子供が欲しいという思いがあって、今、時間的な制約で出来ないのであれば、将来子供を産むときに可能性を広げたいと」

卵子凍結は加齢による卵子の減少などに備えて、卵子を取り出して凍結保存するものです。将来、妊娠をしたいタイミングで受精卵を作り、女性の体に戻します。

医師
「採卵おつかれさまでした。今回10個、採卵できています」

東京・渋谷にある産婦人科「グレイス杉山クリニックSHIBUYA」では2022年から健康な女性の卵子凍結を始め、これまでに約750人の卵子凍結を行いました。

培養士
「これが成熟卵です。これを凍結します」

採り出した卵子は保管専用の施設に運ばれ、マイナス190度前後の温度を保って保管されます。将来の妊娠の可能性を高めることができますが、経済的な負担が大きいという課題もあります。

吉田楓さん 
「50万円をポンと出すという経験はなかなかないので、そのお金をかけるべきかという心配もありました」

吉田さんの場合は、卵子を凍結するまでに約50万円、その後も保管料として1年間で5万円ほどを払い続けることになります。

東京都は9月、少子化対策として卵子凍結をする際に最大30万円の費用を助成することを発表しました。対象は都内に住む18歳から39歳の女性で、都の説明会に参加することなどを条件としていて、10月16日から都が指定する医療機関での受診が始まっています。

卵子凍結を支援する動きは企業でも・・・      

パナソニックコネクト 山中雅恵執行役員  
「海外では既に、卵子凍結という取り組みがもっと進んでいる中で、日本でも卵子凍結ということを取り組みたいという課題感がずっとありました」

パナソニックグループのシステム開発などを行う同社は、10月から福利厚生として卵子凍結をする女性社員に最大40万円補助することとしました。34歳以下の女性社員を対象としています。 

山中執行役員 
「今、本当はここで仕事を頑張りたいんだけども、これを逃すと子どもができなくなっちゃうかもしれないという女性もいて、一番自分に合った選択ができるような会社だよということを広くお伝えしていくことで、女性がより働きやすい会社にもなると思います」

一方で、日本産科婦人科学会は『高齢出産は母体のリスクを高める』などとして、健康な女性の卵子凍結を推奨していません

卵子凍結は仕事と妊娠・出産という、ライフプランに悩む女性の選択肢を広げ、少子化に歯止めをかけることができるのでしょうか。