女子駅伝日本一を決めるクイーンズ駅伝(11月26日・宮城県開催)の予選会であるプリンセス駅伝が10月22日、福岡県宗像市を発着点とする6区間42.195kmのコースに31チームが参加して行われた。創部7年目の岩谷産業が2時間18分46秒で初優勝。16位までのチームと、MGC(マラソン・グランドチャンピオンシップ。パリ五輪代表3枠のうち2人が決定)選手を擁するチームは完走すれば出場権が与えられる特別措置で、25位のワコールもクイーンズ駅伝出場権を得た。
岩谷産業は1区の川村楓(25)が区間賞と同タイムの区間2位で発進すると、3区の若井莉央(24)が単独トップに立った。そして5区の中野円花(32)が区間賞の走りで2位以下を大きく引き離し、優勝を決定づけた。岩谷産業とはどういうチームなのか。
5区・中野がチーム初区間賞 主力3選手が勝利につながる走り
主要区間の3人が完璧に役割を果たした。
1区の川村は区間賞の樺沢和佳奈(24、三井住友海上)と同タイムで区間2位。「1区がどんな位置で中継するか。それが一番大きかったですね」と廣瀬永和監督は川村の走りを高く評価した。「予定通りの位置で、2区以降がその勢いに乗ることができました。大きなミスをすることなく、全員が力を出せたことが勝因です」
2区の前田梨乃(26)は三井住友海上の片貝洋美(32)と並走。残り1km強で引き離されたが、5秒差の2位で3区に中継した。3区は4kmまでに三井住友海上、岩谷産業、ユニクロ、センコーの4チームが集団になったが、5km過ぎに若井とユニクロ・平井見季(27)が抜け出した。8km過ぎに若井がリードを奪い、区間4位ではあったが、2位のユニクロを27秒も引き離した。
「監督に焦らず、慌てず、あきらめずに、と言われていました。前半、付いて行くことができたら後半で出ようと思っていた。自分のペースで押して行けたのがよかったです」(若井)
インターナショナル区間の4区は久木柚奈(22)で、区間13位だったが区間日本人トップとは7秒差にとどめた。猛烈に追い上げてきたP.カムル(28、ルートインホテルズ)に2秒差で1位を死守した。
そして5区の中野が岩谷産業初の区間賞の走りを見せ、2位に上がった九電工に48秒差として勝利を大きく引き寄せた。「1区から4区までの選手がすごく良い位置でタスキを持って来てくれました。自分の仕事は1秒でも早く6区にタスキを渡すこと。後ろとの差はあまり気にせず、テレビ中継車めがけて走りました」。
アンカー6区の青木奈波(28)がルートインホテルズに追い上げられたが、45秒差を保ち、危なげなく初優勝のテープを切った。
7年間の足跡と野口みずきさんの存在
岩谷産業は17年4月に廣瀬永和氏を監督に招聘してスタートした。廣瀬氏はアテネ五輪マラソン金メダルの野口みずきをコーチ、監督として指導した。
しかし、すぐに結果が出るわけではない。
プリンセス駅伝初出場は2年目の18年で21位。2区の選手が走行中に骨折し、約300mをはって進んで中継した。廣瀬監督がやめるように指示を出したが、沿道のスタッフの到着が間に合わなかった。
19年は出場できず、20年は17位。21年に12位となって初めてクイーンズ駅伝に駒を進めた。18年大会2区だった飯田怜や創部メンバーの大同美空らが、岩谷産業選手として初めてクイーンズ駅伝を走った(20位)。20年に加入した中野は19年世界陸上マラソン代表の実績があり、21年加入の安井絵理奈(32)も若い選手たちを牽引した。
昨年はプリンセス駅伝で7位、クイーンズ駅伝は15位と順位を上げた。クイーンズ駅伝では入社3年目の川村が区間10位と、初めて区間トップ10内で走り、エース区間の3区に入社1年目の若井を抜擢した。若井は区間16位ではあったが、その経験が今回のプリンセス駅伝に生きたという。
野口さんもアドバイザーとして「日頃から練習を見に来てくれる」と廣瀬監督。「練習にも身が入るし、具体的なアドバイスもしてくれる。チームが良い形で回っている」。
中野は昨年11月に座骨を痛め、今年7月まで長期間のリハビリ・トレーニングを強いられた。「野口さんも同じ箇所を故障した経験があり、どういう補強をされていたかとか、練習に取り組む姿勢をアドバイスしてもらいました」。
復帰して間もない中野がいきなり区間賞の走りができたのは、「リハビリ・トレーニングをしっかりやって、(体つきが)一回り大きくなったことも影響している」(廣瀬監督)という。