西武の2年目投手・佐藤隼輔(24)が、11月に開催される侍ジャパン・井端弘和新監督(48)の初陣「アジアプロ野球チャンピオンシップ2023」のメンバー入りへ胸中を語った。
「まだ実感が湧かないので、なかなか嬉しさも湧いてこないですね」
それでも、と続ける。
「もし選ばれるのなら、気持ちも鍛えられるだろうし、他球団の選手を見てなにか盗めることがあるといいですね」
若手選手がレベルアップする上で、当たり前のことに聞こえるかもしれない。しかしこの言葉は、ポーカーフェイスの男から滲み出た少しばかりの“欲”だった。
国立・筑波大からドラフト2位で西武に入団。1年目の昨シーズンは開幕4戦目でプロ初登板初先発を果たし、3勝4敗。シーズン終盤は中継ぎとしてマウンドに上がった。
2年目の今季、キャンプインから中継ぎ起用を告げられた左腕は、最速156キロの直球を武器に、チーム2番目となる47試合に登板。勝ちパターンの一角も務め、18ホールド、防御率2.50と上出来の1年に見えたが「んー、75点ぐらいですかね。波があったので」と笑顔はない。それほどまでに1年を通して戦うことの難しさを痛感したという。
「先発とは別のしんどさがありました。中継ぎは終盤になればなるほどその1点で勝敗が分かれたり、投げない日もブルペンで準備したりするじゃないですか。あれだけでも気持ちは作るし、疲労は0じゃない」
夏の訪れを少しずつ感じ始めた5月下旬のこと。普段はあまり感情を表に出さない佐藤だが「疲れてきました…」と珍しく表情を曇らせた。その時、左手に持っていたのはカイロだった。実は当時、指の違和感に悩まされていたという。力勝負が売りなだけに煩しさはもちろんあったが、アップの前後や登板前のブルペンで手を温め、血流を良くすることで改善を図っていた。「見ていたファンの方から電子カイロが届いたんです(笑)」と思わぬ差し入れと支えもあり、2度の抹消はあったがなんとかシーズンを乗り切った。
「今のままでは、1年を通して戦えない」と、身をもって感じたプロ2年目。だからこそ、佐藤にとって日の丸を背負うことは今シーズンの集大成ではない。「来年のために、ですね。変化球や技術は他の選手の方が上だと思うし、うまく“交わす”ことができないといけない。左投手も多いでしょうし、何でもいいから聞ければいい」と狙いは明確だ。来年こそはシーズン完走へ、戦いは始まっている。
■佐藤隼輔(さとう・しゅんすけ)
2000年1月3日生まれ 宮城県仙台市出身 182センチ/83キロ 投手/左投げ
仙台高~筑波大。大学2年時には日米大学野球選手権の日本代表に選出され、中継ぎとして5試合に登板。2021年ドラフト2位で西武に入団。背番号19。1年目は先発として開幕4戦目に初登板初先発をプロ初勝利をあげ、3勝4敗。2年目の今季は中継ぎとして勝ちパターンを務め、47登板18ホールド防御率2.50の好成績を残した。