新着資料展で展示されている女の子は、妹の幸子さんです。当時8歳でした。この絵を描いたのは、2年前のことです。

尾崎さんは、歳の離れた幸子さんをよくかわいがっていました。しかし爆心地近くにいた幸子さんは遺骨や遺品もなく、写真すらも残っていません。

普段はスラスラと絵を描く尾崎さんですが、幸子さんの絵は何度も手が止まりました。

尾崎稔さん
「夢の中で思い出してるんじゃが、出んのよのう」

記憶の中にある、ぼんやりとした面影だけが頼りでした。「目がどうもね違うんよね」。そう言っては、下書きを消しゴムで消していきます。

尾崎稔さん
「わしが悩むことがない。絵を描くのに。初めてや。悩むのは」
記者
「妹さんの絵だから?」
尾崎さん
「じゃろうね。やっぱり、これが、他人なら、ささっと描いて、いいだろうって思うじゃろうが。この妹だけはなぁ。かわいかったけぇ、わしも可愛がりよったんじゃけぇ」

幸子さんの絵は、おととし7月に資料館へ寄贈しました。尾崎さんの絵を見続けている、学芸員の高橋佳代さんが受けておりました。

原爆資料館学芸員 高橋佳代さん
「赤い服が良く似合ってて、かわいい顔してますね。仲良かったですか?妹さんと」
尾崎さん
「みんな仲良かった。一番下じゃしな。みんな可愛がりよったよ」
高橋さん
「お兄ちゃん、お兄ちゃんみたいな?」
尾崎さん
「うん。そうそう」