イスラエル男性の訴え 両親殺されても「復讐は望まない」
各地で怒りが増幅していく中、“復讐の連鎖”を止めたいと願う男性がいます。イスラエル人のマオズ・イノンさんは、戦闘の発端となったあの日、父・ヤコビさんと母・ビルハさんをハマスの戦闘員に殺害されました。

ハマスに両親を殺害された マオズ・イノンさん
「土曜日、父に電話をすると、『安全な場所にいるけど周囲で銃撃が起きている』と話していました」
その後、両親の身に何が起きたのか。10月7日、1000人以上のハマスの戦闘員はガザ境界を越え、イスラエルに侵入。両親が暮らす村などを次々と襲撃しました。
襲撃を受けた村の一つ、ベエリに向かうと…

須賀川記者
「家屋の多くが火を放って燃やされています。どういうことかというと、それぞれの家の中にシェルターがあるんです。そのシェルターに逃げ込んだ住人をあぶり出すために、火をつけて出てきたところを拉致したり、場合によっては殺害したりといったことが、この辺りの多くの家で起きていたということです」
マオズさん
「近所の人から家が燃えているのが見えたとの連絡がありました」
マオズさんの両親も焼けた家の中で、変わり果てた姿で見つかったのです。

「よく眠れません。眠ろうとしても3~4時間眠っては泣いてしまう。非常につらいです」
危険と隣り合わせのガザ境界近くで暮らしていた両親についてこう振り返ります。
――両親はガザの人をどう思っていた?
「両親は壁の向こうの(ガザの)人々に自由な暮らしをしてほしいと願っていました。彼らにも市民権があり、人間として扱っていたのです」

そのため、ハマスに両親を殺されても復讐は望んでいないと訴えます。
「イスラエルとパレスチナの間で1世紀以上も暴力と血の連鎖が続いています。復讐の連鎖を立てなければなりません。復讐を次世代に引き継ぎたくない」
「私も両親のように寛大に全ての人を受け入れようと心がけています」

「あなたたちが日本人だからこそ、今回この取材に応じたい」
須賀川記者:
マオズさんは、私に「特にあなたたちが日本人だからこそ、今回この取材に応じたい」というふうに言ってくれました。

マオズさんからの言葉です。「日本とアメリカは今は同盟を結んでいる。同じ価値観を共有し、同じ民主主義、制度を尊重している。だから将来、私たちはイスラエルとパレスチナが同じ価値観を共有できると信じている」と。「だからこそ日本の力を借りたい、日本の歴史、日本の人々に助けて欲しいです」と、そういうふうに私に語ってくれました。本当に貴重な言葉で、しかも実際に両親を殺されてしまった男性からの言葉が、私たち日本に向けられているということを私たちは強く受け止めなくちゃいけないと思っています。
ただ一方で、イスラエル国内では、やはり極めて強い処罰感情が広がってしまっています。やっぱりハマスを支持する市民も、これはハマスと同等とみなすと、この戦争で終わらせなくてはいけない。そういった本来であればガザに住んでいる人たち、抑圧されてる人たちに対して同情的だった人も厳しい意見を持ってしまっている。それも現実なんだなというふうに感じています。