長野県松本市で、収穫を目前にしたブドウがシカに食べられてしまう被害が続いています。
農家は「野生鳥獣による農作物被害に苦慮する現状を知ってほしい」と話します。

ブドウ畑で侵入防止用のネットに角がからまって暴れているシカ。

松本市のブドウ畑で16日に撮影された映像です。

シカはこの畑で収穫を目前にしたブドウ「ピオーネ」を端から食い荒らしていました。

房ごとにかけてある袋をかじって取り除き、手当たり次第に実を食べてしまったといいます。

暴れていたシカは、この後、地元の猟友会によって駆除されました。

「シカが絡まっていたのはここになります。だいぶ暴れた後が」

シカによる食害があったのは松本市寿北(ことぶききた)の農業・小澤浩明(おざわ・ひろあき)さんのブドウ畑です。

破れたネットの先に広がるのが、収穫期を迎えた「ピオーネ」のブドウ棚です。

「これがシカに食べられてしまった後のピオーネです」

シカに食べられ、軸だけが残っているものや、房の下半分が食べられたものなど、被害は広い範囲で確認されました。

小澤浩明さん:
「ここに4本の木があるが、今年は100房以上は被害にあってます。今年は特に多いです。切ないですね。収穫直前にやられちゃうもんで」

10年ほど前からシカによる被害を受けてきたという小澤さんは、ネットを幾重にも張るなど対策をとってきました。

小澤さん:
「外周金網のネットとナイロンのネット、さらに木の周りで黄色いネット張ってる穴があってふさぐとまた別のところから…いたちごっこですね」

県内には現在、およそ22万頭のニホンジカが生息していると推定されていて、毎年3万頭前後が駆除されています。

しかし、増えるシカの数に捕獲が追いついていないのが現状で個体数は少しずつ増えています。

防護柵を設置するなどの対策で、農産物の被害額は近年減少傾向にあるものの、依然、その被害は甚大で、2021年度の被害額は1億4200万円と、全国で4番目に高い数字となっています。

県は、侵入防止柵の強化や、シカが里に下りてこないよう生息環境を管理するなど、地域住民の協力が不可欠として、引き続き対策を呼びかけています。