富山市の神通川流域で発生したイタイイタイ病。神通川流域の住民らは原因企業の公害対策、環境対策を監視する「立ち入り調査」を継続していて、14日も52回目の全体立ち入り調査を行いました。調査開始から半世紀以上が経っても被害を繰り返さないため、住民たちは、神通川の水質改善についてより高い基準を目指して努力していく姿勢を企業側に求めています。

この調査は、イタイイタイ病の被害者団体と原因企業の三井金属鉱業(現・神岡鉱業)が結んだ「公害防止協定」のもとで毎年行われている独自の取り組みで、ことしも神通川流域の住民や科学者、弁護士などおよそ70人が参加しました。
イタイイタイ病とは…
イタイイタイ病は、神通川上流に位置する神岡鉱山(岐阜県飛騨市神岡町)から重金属のひとつ「カドミウム」を含む汚染水が流されたことが原因の公害病で、その水を飲み水や生活に使っていた神通川流域の住民は重い腎臓障害を患い、骨がもろくなって骨折を繰り返す苦しみのなかで死んでいきました。

今も神岡鉱山では三井金属鉱業の完全子会社である神岡鉱業が事業をおこなっていて、金属製錬などにより現在もカドミウムなどの有害物質が発生するため、住民らは排水処理施設などを周り、十分な環境対策が行われているかを直接、確認しました。
現地調査の後の質疑応答で、住民側はカドミウムの濃度は健康に影響のない「排水基準」を満たしている一方、生活環境にとって望ましい「環境基準」に向けた改善が進んでいないと指摘しました。
参加した住民:
「重金属の排出濃度が思うほど改善が見られていない。有害金属は環境基準を目指して努力すると、こういった確認を。今後ともその通りそういう態度でやっていかれるのだろうか」

神岡鉱業・岡田洋一社長:
「環境基準は排水基準の10分の1の濃度というのが一般的な設定なんですけど、環境基準値を満たすこと自体がかなりチャレンジングな目標だなと認識している。ただ、その目標を取り下げるようなことはなく、努力目標という形でそれに少しでも近づけるように、これまで同様地道に愚直に改善に取り組んでいきたいと思いますので、決して取り組みが後退したということではないので、ご安心していただきたい」
“世代交代”する被害者団体
被害者団体では、代表や弁護士が交代するなど若い世代に活動が引き継がれていて、調査に新たに参加する住民も増えているといいます。

神通川流域カドミウム被害団体連絡協議会
江添良作代表理事:
「我々は100年(の継続)を目指さなければならない。そういう中で、この51年52年がこれからの50年を決めるそういった年になるんじゃないかと。神通川の清流を守る、富山県のど真ん中の農地を守っていくと。そういう気概は今後ともずっと持ち続けたい、そのために住民運動はなんとしても継続していきたい」
イタイイタイ病をめぐっては、2023年、94歳の女性が将来イタイイタイ病に発展するリスクがある「要観察者」に新たに認定されています。
これまで県が認定したイタイイタイ病の患者は累計で201人、生存している人は1人となっています。