痛恨のミス「藤井八冠が見逃してくれる訳がないと分かっていた」

Q. 永瀬前王座が痛恨の一手をしてしまった。その後、普通だったらポーカーフェイスで相手に失敗したことを読ませないと思うんですけど、それを全部見せちゃいました。

「もう隠せないくらい痛恨の失着だったし、藤井八冠が見逃してくれる訳がないと永瀬前王座も分かっている。今までの長い付き合いで。あの時に永瀬前王座は自分の負けを悟ったんだと思う」

Q.もう長年の研究パートナーだから、相手は気づいているだろう。そんなことよりも自分の感情を優先させてしまった?

「あそこで隠してもしょうがない。勝ち負けには関係ない。“指してしまった自分を後悔した時間”だったんだろうなと思いました」

Q.そこまでさせた藤井八冠が強かったということですか?

「とも言えます。改めて藤井八冠の底知れぬ強さを感じましたが、永瀬前王座、本当に追い詰めていましたよね。ですから、今回の勝負は敗れてしまったけれど、恐らく藤井八冠の一角を崩す最有力候補は永瀬前王座だと思います」

Q.だって、4局戦って全て永瀬前王座ペースだったとおっしゃっていましたよね?

「実質、永瀬前王座が3勝1敗でもおかしくないような内容でした。永瀬前王座が本当に追い詰めていました。ただ将棋というのは、最後の最後でひっくりかえってしまうものであるということ。改めてそれを感じました」

Q.将棋って怖いんですね。

「怖いですね。でもそこが面白いところでもあるんですけどね」

Q.藤井七冠が藤井八冠になりました。師匠としてはどんなお気持ちですか?

「そうですね、挑戦すれば必ずとっていく、本当に自然にタイトルを増やしていくんだなということを見ていて感じまして、ただね、その裏には、本当に人知れない努力と言いますか、本人は当たり前のようにやっていますけども、将棋にかける時間、その集中力というのは、常人では測れないものがあるだろうなと思います」