ブランク乗り越え… 本格的に実践復帰

故郷愛媛で心身ともにリフレッシュした鈴木健吾選手は、これを機に本格的に実践に復帰。フルマラソンからは1年3か月遠ざかっていたが、今年6月の函館ハーフマラソンでは1時間2分46秒で7位と、ブランクを乗り越え順調な回復ぶりをアピールすると同時に、10月のMGCマラソングランドチャンピオンシップに向かって復活への第一歩を踏み出した。

「練習も途中の段階だったので、MGCを考えた時に、自分の現在地を把握しておくために調整も兼ねてハーフマラソンに出ました。ずっと練習はしてきましたが、力を発揮できるのはやはりレースなので出られたことはよかったです」

ただ、気になるのはフルマラソンからのブランクだが、鈴木選手は表情ひとつ変えず、こう一言。

「マラソンはそんなに、年に何本も走るものではないのでしっかり準備できれば全然問題ないと思います」

では、その「準備」。さぞ綿密な計画のもとに進められているのだろうと尋ねれば、その答えは意外なほど自然体だった。

「1本のマラソンを走るのに3、4か月かけて臨みますが、自分がその間こういう練習をやろうと考えていても、なかなかそれ通りには毎回いかないのが難しいところ。コーチやスタッフと相談しながら微調整していく過程が大事だし、その経験値が次に繋がっていくのかなと思いますね。プロセスも違うし、レースが冬にあるのか夏にあるのかで取り組み方も変わってきます。ですからプランに縛られるとうまくいかない事もあるので、柔軟に臨機応変にやっていくのが大事かなと思います」

インタビュールームの気温が少し上がった気がする。

「成功体験ばかりに縛られると、その時にアクシデントがあったりすると、次のプランがなかなか出てこなかったりするので、いろいろな引き出しを持っているのは大事だと思います」

実戦不足をカバーする練習の質。

MGCまで50日余り、10日間の千歳合宿では連日30℃越えという北海道では異例の暑さ続きの中、30キロ走を週3回こなすなど走り込んできた鈴木選手。

取材で訪れたこの日は、追いこんだメニューの翌日で軽めの調整日だったが、かえって誤魔化しのきかないスローペースの中、腰の高いフォームを意識しながら、オフロードからトラックまで黙々と距離を重ねていた。

自転車で伴走していた富士通陸上競技部の高野善輝コーチに鈴木選手の状態を尋ねてみた。

富士通陸上競技部 高野善輝コーチ

「今年の6月に函館ハーフを走って、想定していた以上の結果が出たので、そこから尻上がりに状態も上がってきています。MGCではいい状態でスタートラインに立てるのではないかと思っています」と笑顔だ。