証言台で振り返る 楽しかった「死ぬための旅行」

男は黒いシャツにグレーのパンツ、眼鏡姿で証言台に立ち、被告人質問で犯行の詳細を語りました。友人や家族つきあいのない男と女性は、交際を始めた2002年ごろ、車で福井県の東尋坊を目指し「死ぬための旅行」をしました。ただ、旅行が楽しかったことなどから思いとどまり、山口市に戻り2人で生活を始めます。このころは「幸せだった」と語る男。2人の関係が変わりだしたのは、女性の母親が施設に入った2018年でした。

働かない男に、女性はきつくあたるようになります。男に「仕事しろ」などと語気強く言うほか、茶わんを投げることもありました。男は1度、女性に突き飛ばされてガラスに手を突っ込み、15針を縫うけがをしたこともありました。犯行の1か月前からは、食事を与えられる回数が減っていき、ひどいときは5日に1回も与えられなかったと言います。そんな中でも男は、家にある食べ物を食べたり、自分で買ったりすることはありませんでした。「見つかって怒られるのが怖かった」。犯行当日は、午前2時半ごろに目が覚めると、空腹のため眠れず、今までのことが頭に浮かびます。「こんな生活から脱したい。女性を1人残してもかわいそうだから、女性を殺して自分も死のう」と思い出し、包丁を取りました。