住宅で内縁の妻を殺害し、遺体を1年以上放置したとされる男の裁判員裁判。10日、山口地裁で開かれた初公判で、動機やいきさつが明らかになりました。

殺人、死体遺棄、詐欺などの罪に問われているのは、住所不定・無職の男(55)です。起訴状によると男は2021年4月、山口市の住宅で、内縁の妻の女性(当時66)の胸や首を包丁で何度も刺して殺害。遺体をおよそ1年3か月放置し、その間、女性の年金などを不正に受給していたとされます。

初公判で起訴内容を認めた男。検察は冒頭陳述で、事件のいきさつを説明しました。

2人は2002年ごろから交際を始め、山口市内のアパートで同居していました。男はトラック運転手として働いていましたが、長続きせず、複数の会社を転々としていました。2013年、生活が苦しくなったことから2人は女性の母親が1人で暮らす市内の家に引っ越します。この5年後、母親が施設に入所すると、再び2人の生活となりました。

このころ、男は運送会社やりんご園で働きましたが、どれも長続きせず、2020年12月からは無職となりました。翌年の3月ごろから、男が働かないことを理由に、女性が男の分の食事を用意しなくなります。

その状態が続くと、男は次第に怒りや憎しみを募らせます。そして4月8日未明、深夜に目を覚ました時、空腹を感じたことをきっかけに女性を殺そうと決意。台所にあった包丁で、寝ていた女性の胸を刺しました。痛みに驚き、目を覚まし逃げ出した女性の脇腹や首を何度も刺して、殺害しました。その後、男は遺体を布団で包んで別の部屋へ移動させ、毛布をかぶせ放置。女性の口座の金や年金などを使って、その家で1年以上生活を続けました。

2022年7月、金がなくなった男が近くの交番に自首し、警察が調べたところ、白骨化した遺体が見つかりました。遺体の周辺には、大量の虫の死骸や、さなぎの殻が散乱していたということです。出頭した時の男の所持金は24円、口座には734円しかありませんでした。