宮崎かづゑさんの著書「祖父はふっと姿を消して…」

(朗読長い道/宮崎かづゑ)「祖父は三、四日ほど園に残ってくれて、家族用の宿舎から私のいる収容所に毎朝通ってきてくれました。それで私、『家に帰らなきゃ』と思ったのか、どなたかに『おじいちゃんといっしょに帰るから』と言った記憶があるんです。島に来た意味をわかっているようで、よくわかっていなかったのかもしれませんね。祖父はその言葉を耳にしたからでしょう、ある日、ふっと姿を消して、ついにいつまで待っても姿を現すことがありませんでした」

「あれから85年、宮崎かづゑさんです(拍手)」

(沢知恵さん)「もし私だったら、とても生き抜けなかったと思うような、そんな人生を歩んだ末に、この堂々としたお姿に接して、それを伝えないではいられないんです。」

(沢知恵さん)「もちろん負の部分、歴史もしっかり伝えたいけれども、おひとりおひとりの尊厳を高らかに私は伝えたい。この人たちひとりひとりの輝きを、これから生涯をかけて伝えていきたいと思っています」