愛知県春日井市の田島浩幸さんは、2年前、下咽頭がんで声帯を摘出。声を失った。ステージ4の進行がんだった。
田島さんは、6年前の大腸がんがきっかけで、健康チェックはしっかり行ってきた。しかし、まさかの事態に。「声はあきらめました」とつぶやいた。
国内には声を失った人は推計3万人。もう一度、自分の声で話したいと訓練を積み重ねている人が多くいる。しかし、元の声そのものを取り戻すことは不可能。
こうした中で、名古屋大学の研究チームが「自分の声」を再現するアプリ開発に取り組んでいた。田島さんはこの開発プロジェクトに加わり、声を失った人たちのために実験段階から参加することになった。
「あきらめた声がひょっとしたら、取り戻せるかも…」
希望の光が差し込んできた。果して最先端の声再生プロジェクトはどこまで人の声に近づいた声をあやつれるようになるのか…。
CBCテレビでは、2023年10月8日(日)深夜1時28分(※日付変わって10月9日月曜日)にドキュメンタリー番組【「声-」あなたへ】を放送します。

名古屋大学病院 耳鼻咽喉科 西尾 直樹医師(43)
年間平均20件の声帯摘出手術。命を救うために「声を取る」。
それが使命のはずだが、「声はその人の人生…命は救えても、心の底から喜べない」と複雑な思いがあった…。
トラック運転手 田島 浩幸さん(64)
2022年2月、ステージ4の下咽頭がんで声を失った。
一度はあきらめた「自分の声」。でも、本当は成長した孫と「自分の声」で会話したいという希望が…。果たして夢は叶うのか。
西尾医師が中心となって開発しているアプリ「SavetheVoice」。
声帯摘出者が会話で使う電気咽頭の機械音をAI搭載のアプリが自分の声に変換。
完成すれば、世界初となるが…
“自分の声”で話す当たり前の日常。でも、もし声を失ったら…。のどのガンで声を失った男性、でも「もう一度自分の声で話したい」。
番組の取材は、2022年6月に放送したCBCテレビ「チャント!」の企画から始まりました。(以下、年齢や時制は放送当時のものです。)
声を失っても…“自分の声”で

愛知県東海市に住む、藤田美佳子さん(51歳)。
全身の筋肉が徐々に動かなくなる難病、ALSを患っています。
5年前に発症し、今では手がほとんど動かなくなり、足はかろうじて動かせますが、声を出すことも難しくなってきました。
(藤田さん)
「息苦しさとか、話しにくさが症状で出てきてる。不安だし、怖いし…」
そんな不安を抱える中、出会ったのが“自分の声”で話してくれるアプリ「コエステーション」通称コエステです。伝えたいメッセージを打ち込むと…
(アプリ音声)
「ふじたみかこです。よろしくおねがいします」
アプリには日本語などを抑揚なく読める自動音声が搭載されています。
ユーザー(患者)がおよそ200の例文を読めば読むほど、AIが学習していき、自動音声がユーザーの声に近づいていきます。
藤田さんは全ての例文をすでに読み終えています。“声を失うかもしれない”将来を見据えて、自分の声を、このアプリに託しているのです。
(藤田さん)「(声を失っても)家族とか友達とか、私の声で話すことができたらいいのかなと」