時効撤廃を訴えた父・賢二さん そして時効は…

「人の命を奪っておいて、一定の年月が来たら大手を振って世の中を歩けるというこの理不尽な制度をなんとか廃止したい」(順子さんの父・賢二さん 2009年)

順子さんの父・賢二さんは、時効制度に疑問を投げかけた。その思いは他の遺族を動かし、2009年に殺人事件遺族の会「宙の会」が発足。法務省に署名と嘆願書を提出するなどして時効の撤廃を訴えた。
そして、2010年4月、殺人など凶悪事件の時効を撤廃することを盛り込んだ刑法と刑事訴訟法の改正法が成立。順子さんの事件など、時効が成立していない過去の未解決事件にも適用された。法案成立の瞬間、賢二さんは天を仰ぎ涙を流していた。


賢二さんはその後もメディアの取材を受け続け、情報提供を求めるとともに、犯人へ、思いをぶつけてきた。

「(時効の廃止により)一生逃げ通すことはできない。このことを改めて覚悟し、一刻も早く出頭してほしい」(2014年)

「1人の若者の命と夢と、そして希望を無残にも奪っていった犯人を絶対に許すことはできません」(2017年)

「(犯人が)この空の下のどこかで我々と同じ空気を吸い、のうのうと生きながらえているということを思うと、本当にいてもたってもいられないという気持ちです」(2020年)

「人の命を奪った犯人は一生逃げ切ることはできない。自首なり出頭してきなさい、と言いたい」(2021年)



2023年、77歳になった賢二さんは、取材にこう答えている。

「私たち遺族が最も恐れているのが事件の風化です。私たちも警察もそしてメディアも、犯人を追い続けているぞ、決して諦めていないぞという気持ちを、犯人の耳に届くように発信し続けるということです」

私や同級生も思いは同じだ。

「犯人が逮捕されることをずっと願っている。そして真相を知りたい」(ともこさん)

「なぜあの時彼女を殺さなければならなかったのか知る由もないが、まだ生きているなら、自首して小林家に謝罪し、罪を償ってほしい」(亮太さん)

「事件が忘れられ、未解決で終わるかもしれないと思うと悔しい。なぜこんなことをしたのか、犯人に聞きたい」(かおりさん)

犯人はもうこの世にいないのでは、という考えが頭をよぎることもある。ただ、そんなことは絶対に許されない。日々、良心の呵責(かしゃく)にさいなまれ、いつ捜査の手が及ぶかとおびえ続け、苦しみと悔恨の中で生きていなければらならない。そして、自首をして、犯した罪と向き合ってほしい。

事件現場の住宅の跡地には、消防団の格納庫と「順子地蔵」と名付けられたお地蔵様がある。いつか同級生と一緒に訪れ、順子さんに事件の解決を報告し、あの日の感謝を伝えたい。