耳が聞こえないアスリートの国際大会「デフリンピック」。デフリンピックは、パラリンピックとは別に4年に1度開かれ、2025年に日本で初めて東京で開催されます。
 その大会エンブレムは、聴覚に障害がある21歳の女子大学生がデザインしました。 
 手をモチーフに、桜があしらわれたカラフルなエンブレム。そこに込めた思いとは…。
 9月、親戚がいる札幌を訪れた際、作者本人に話を聞きました。



大会のイメージが一目で伝わるように手で「輪」をデザイン


 岩手県盛岡市出身の多田伊吹さん21歳。生まれた時から、ほとんど耳が聞こえません。
 日本で唯一の視覚・聴覚障害者のための大学、筑波技術大学に通う4年生です。

多田伊吹さん
「人と人とのつながりを手で表現し、選手や観客、大会に関わる人たちのつながりを『輪』としてデザインしました」

最終選考で、都内の中高生たちの投票で選ばれた多田さんの作品

 多田さんがデザインしたデフリンピック東京大会のエンブレムは、手をモチーフに、カラフルな色で縁取られ、桜があしらわれています。応募作品のうち最終選考に進んだ3作品の中から、9月、都内の中高生たちの投票で選ばれました。

大学でユニバーサルデザインを学ぶ

 多田伊吹さん
「デフリンピックは、オリンピックと比べて認知度は低いので、自分もデフリンピックに貢献してみたいと思い、挑戦しました。大会では、聴覚に障害があるアスリートが躍動する姿を見てほしいです。」



見学したハンドボール部の練習でひらめく

 多田さんは大学で、障害者やお年寄り、子ども、外国人など、誰にでも伝わる「ユニバーサルデザイン」を学んでいます。
 今回、応募するにあたり、アイデアを得ようと、大学のハンドボール部の練習を見学したといいます。そこでひらめいたのが、手でした。選手同士が手話で意思を伝え、身振り手振りで合図しながらスピーディに試合を展開する姿に刺激を受けたといいます。

母親の出身地・札幌市に年に1回訪れ、親族と会うのが楽しみという多田さん

 「手話があれば、選手同士の連携や協力も可能です。手話でコミュニケーションを密に取っている選手を見て、手をモチーフにしたデザインにしようと思いました。」

「デフリンピックを見ることで聴覚障害者の世界を見ることができます」

 聴覚に障害がある人のコミュニケーションに大切な「手」をモチーフに、人と人がつながる「輪」を表現。そしてこの大会をきっかけに、新しい未来が咲くことをイメージして「桜の花びら」をあしらいました。