9月27日、EXILEのATSUSHIさんが罹患を明らかにした「ライム病」。これまでに歌手のジャスティン・ビーバーさんやアヴリル・ラヴィーンさんも闘病について語っているこの病気について、感染症の専門家は「ライム病は潜伏期間が長く、気づかずにいると症状が多様化して“ブラックボックス”のような存在になる」としています。

「ライム病」とは… 国内では北海道や長野で多く

ライム病とは“ダニ”を媒介とした感染症の一種です。野ネズミや小鳥などが持つ「ボレリア属」の細菌を媒介したマダニに刺されることで感染するとされていて、ライム病を媒介するのは、山間部など標高の高い地域に生息する「シュルツェ・マダニ」です。

シュルツェ・マダニ(左から幼虫、飽血幼虫、若虫、飽血若虫、成虫メス、飽血成虫メス )国立感染症研究所HPより

ライム病は、アメリカで1975年に初確認されました。国内では1990年代から知られるようになり、年間15件~20件程度の報告があります。特にシュルツェ・マダニが生息する北海道や長野県で多く発生していますが、各地で症例があり、例えば富山県では2001年に初確認(60代女性)、2006年に2例目(20代女性)が確認されています。

ライム病届け出数(国立感染症研究所HPより,2013年-2018年)

■潜伏期間が長く、気づかず“ブラックボックス”にも

ライム病の初期症状は、ダニに刺された部分を中心に皮膚が広範囲に赤くなる「遊走性紅斑」のほか、倦怠感や発熱、筋肉痛、関節痛などがあります。症状が軽いと気づかないこともありますが、ライム病は潜伏期間が数日~数週間と長くにわたることもあるのが特徴です。富山県衛生研究所の大石和徳所長は、「潜伏期間が長いために気づかずにいると、症状が多様化する」と指摘。何の病気なのかわからなかったり、時間が経たないとわからない“ブラックボックス”のような存在になるといいます。大石所長によりますと、基本的には「飲み薬や点滴で完治できる病気」ですが、国立感染症研究所によりますと、関節炎、良性リンパ球腫、慢性萎縮性肢端皮膚炎、髄膜炎、心筋炎など多様な症状が、ライム病の一症状であることが明らかになっていて、気づかずに重症化すると怖い病気といえそうです。

2002~2017年に富山県衛生研究所が行った調査では、富山県の標高の高い地域に生息するシュルツェ・マダニのうち10〜20%程度がライム病の細菌を持っていたという結果が出ています。そうしたダニに刺されると、ライム病を発症するおそれがあるのです。