泥沼のような長期戦を危惧する声も聞こえる、ロシアとウクライナの戦い。この戦争に双方が受け入れる「終わり方」があるのでしょうか。

今、大阪ではロシアのウクライナ侵攻に反対する思いを風刺画で伝える展示会が催されています。

ある一枚の風刺画には、ナチスドイツのヒトラー、旧ソ連のスターリンの2人の独裁者に挟まれているロシアのプーチン大統領が描かれています。

別の風刺画には、戦車の前に立ちはだかる人・・・。ロシア国旗に付いたファスナーの下からのぞくのは、ウクライナの国旗です。

■欧州、戦争の終わらせ方に温度差

侵攻開始から100日以上がすぎ、長期化の様相を見せるウクライナ侵攻。

昔から「戦争は始めるのは簡単だが、終わらせ方が難しい」とされますが、この『戦争の終わらせ方』を巡って、西側諸国でも今、微妙な温度差が生じつつあります。

6月16日、ドイツ、フランス、イタリアの3か国首脳がウクライナを訪問。EU(ヨーロッパ連合)への加盟を支援することを伝えました。

その一方で、これに先立ち、ウクライナの大統領府顧問は、「3か国首脳がロシアに有利な平和協定を受け入れるよう、ウクライナに圧力をかけることを懸念している」と語ったのです。

実は訪問前に、フランスのマクロン大統領は地元紙とのインタビューでこう語っていました。

「停戦が実現した際に、ロシアに屈辱を与えてはならない」

ロシアへの配慮がにじむこの言葉に、ウクライナ側が反発したのです。

■「和平派」と「正義派」

今回の訪問ではウクライナ側が懸念するような圧力はなかったと見られるものの、フランスをはじめ、ドイツやイタリアは、多少の譲歩をしても、早期停戦を求める、いわゆる「和平派」とされています。

かたや、徹底抗戦を叫ぶ国もあります。

エストニア・カリス大統領
「プーチン大統領はこの戦争に敗北しなければなりません。そうしないとヨーロッパに平和は訪れません」

第2次大戦中に旧ソ連に併合されたポーランドやバルト3国などは、ウクライナの徹底抗戦を支持、ロシアの敗北を求める「正義派」とされます。

■ウクライナ侵攻の落としどころは?

こうした和平派、正義派を含め、焦点となっているのが、どの地点までさかのぼってこの戦争を終わらせるのかということです。

例えば、ロシアが一方的に併合したクリミアを取り戻すまでウクライナ側は戦うのか。それとも2月の軍事侵攻前の時点に戻すのを目標とするのか。あるいは現在、ロシアが掌握している東部ドンバス地方は、ロシアに譲るのかなど、様々な意見が飛び交っています。

■過去の戦争の終わらせ方

では、過去の戦争は、一体、どういった形で終結したのでしょうか?

防衛研究所の千々和さんは、戦争終結には大きく二つの形があるといいます。

防衛研究所・千々和泰明主任研究官
「1つは『紛争原因の根本的解決』という形です。相手をコテンパンにやっつけてしまうと、この相手とは二度と戦争せずに済むわけです。ところが、こういった戦争終結の形態を選ぶと、犠牲が増える。そこで、相手と妥協するという選択が出てくる。これが『妥協的和平』というもの」

「紛争原因の根本的解決」の典型的な例は、ヒトラーのナチスドイツを徹底して倒すまで戦った第二次大戦が挙げられ、アフガニスタン戦争やイラク戦争もこのケースに当たるといいます。

また「妥協的和平」の例としては、湾岸戦争があります。多国籍軍はイラク軍への攻撃を途中で停止し、フセイン体制を延命させました。朝鮮戦争やベトナム戦争も同様だといいます。

では、今回のロシアによるウクライナ侵攻はどのように終わるのでしょうか

■ウクライナと類似?「冬戦争」とは

戦闘の長期化で、市民の犠牲も増え続ける一方、終結のめどが立たないウクライナ侵攻。

千々和さんが参考になるケースとしてあげたのが、1939年にソ連がフィンランドに侵攻した「冬戦争」です。

防衛研究所・千々和泰明主任研究官
「戦力としては、ソ連の方が優位だということで、フィンランドを制圧して傀儡政権の樹立を考えていたわけですが、フィンランド側が非常に激しい抵抗を示してソ連は制圧を諦めざるを得なかった」

その後、講和条約が締結され、「冬戦争」は終結。しかし、フィンランドは善戦したものの、この条約で国土の10分の1を割譲することになったのです。千々和さんはウクライナも今後、同じような状況になる可能性があると指摘します。

防衛研究所・千々和泰明主任研究官
「(「冬戦争」では)優勢と考えていた側が劣勢側の激しい抵抗によって当初の目的を達成できなかった。ただし、劣勢側も自分たちの要求を100%通すことができず、現在、ウクライナも国土の20%位を奪われている。もしこのまま現在のラインで停戦ということになるとすれば、「冬戦争」と類似した形の戦争終結になってしまいます。それは非常に厳しい選択」

大国の侵略に徹底抗戦しながらも、小国が苦杯を飲まざるを得なかった「冬戦争」の歴史。

今回の戦争の「出口」は、どこにあるのでしょう。

(「サンデーモーニグ」2022年6月19日放送より)