年間4万人近い救急患者を受け入れている中川区の名古屋掖済会病院。「断らない救急」を掲げ、ひっきりなしに重篤な症状の患者が運ばれてきます。しかしこの夏、救命救急の現場にコロナ患者が急増して病床がないというピンチが。懸命に命を救おうと闘う最前線に密着しました。
「断らない救急」を掲げ24時間365日奮闘する医師たち

中川区にある名古屋掖済会病院の救命救急センター。「断らない救急」を掲げ、軽症から重篤な患者まで受け入れています。
この日、運ばれてきたのは60代女性。強いだるさや吐き気を訴え、ショック状態です。調べてみると、心拍数が1分間に200回を超え、危険な状況に陥っていました。医師の診断で、心臓が動いている状態での電気ショックを行うと、心拍は通常に戻りました。
午後7時過ぎ。交通事故でけがをした女子高校生が運ばれてきました。頭などを強く打ったようです。
(小川健一朗医師)
「腰骨が一部折れているので入院して治療」
この日の救急当直の小川医師の診断で、専門医へ引き渡します。その後もひっきりなしに電話が鳴り、次々に患者が運び込まれます。その中には、新型コロナの感染が疑われる発熱患者も。4月下旬は、県内の感染者数は落ち着いていましたが看護師はこれまで通り、“防護服”を着て対応していました。
その後も患者の搬送が相次ぎ、気づけば午前1時半。小川医師が夕食に頼んでいた「冷やし担々麺」はカチカチになっていました。
(小川健一朗医師)
「研修医の子たちも(夕食を)食べられてない。なかなか決まった時間には食べられないですね」
これが24時間365日、奮闘する医師のリアルです。
東海地方でここだけ!最新設備「ハイブリットER」とは

別の日。意識を失って倒れた男性が救急車で到着。運び込まれた先は最新の機械が設置されている部屋。その名も「ハイブリッドER」。東海地方では、ここだけの施設です。
(救命救急センター・後藤 縁センター長)
「CTを用いて迅速に診断ができるということと、放射線を用いた検査・治療を迅速に始めることができるシステム」
通常は患者の検査や処置のために、離れた検査室に移動しなければなりませんが、この「ハイブリッドER」はセンター内にCTや血管撮影装置などを設置した部屋を作り、患者はその場で詳しい検査を受けつつ治療を受けられます。2020年に東海地方の病院ではじめて導入されました。
(救命救急センター・後藤 縁センター長)
「時間との勝負というところが大きいので、より迅速に診断がついて治療方針が決められるという点で利点がある」
さきほど搬送された男性は、脳梗塞と診断され、小川先生がすぐに、血栓を取り除くカテーテル治療を行い、およそ1時間の手術を終えました。
(小川健一朗医師)
「頭の細胞が瀕死の状態。ギリギリ生きているところは助かるので、その細胞をどれだけ助けられるかという時間勝負」
時間がたてばたつほど、脳細胞がダメになっていくのでできるだけ早く手術をしたいといいます。このハイブリッドERは交通事故の重傷患者などを救うことに役立つとして、愛知県は名古屋掖済会病院を「重症外傷センター」に指定。ことし1月から試験的に、他の病院が対応できないと判断した、重篤な患者を受け入れる体制がとられています。
(救命救急センター・後藤縁センター長)
「システムを運用することで、当然救命につなげないといけません、例えば歩いて帰れますとか、頭がしっかりした状態で帰れますというのがすごく大事な目標になる。重症外傷センターでたくさんの患者を診ることによって、医者やスタッフもより技術を磨く意義がある」