今年5月、震度6強の地震で、大きな被害がでた石川県珠洲市。
復旧が進む珠洲市をドキュメンタリー映画で後世に残そうと奮闘する2人の男性がいます。
映画にかける思いに迫ります。
「いらっしゃいませ」
穴水町のガソリンスタンド働く外山泰典さん。48歳。

神奈川県在住の外山さんは2013年から3年間地域おこし協力隊として七尾市で活動し、その間、珠洲市でも里山里海を活かした地域支援活動にも参加していました。外山さんにとって思い出の多い珠洲市を今年5月5日、震度6強を観測する地震が襲いました。
外山泰典さん
「被害が一番大きかった正院・蛸島地区で家の中の被害状況を聞き取り調査して使う物を家の外に出したり不要なものをゴミステーションに出したりしていた」
2019年、神奈川県の自宅が台風による土砂崩れで全壊し、被災者となった経験からボランティアに参加した外山さん。
復旧作業を進めながら復興していく珠洲の様子をドキュメンタリー映画で残すことを決意し、知人で映画監督の有馬尚史さんと制作活動に入りました。

制作費が乏しいこの映画に協力してくれたのが穴水町でガソリンスタンドを経営する森本敬一さんです。
外山泰典さん
「(週に)3、4日働かせてもらって、映画の準備と同時並行させてもらってます。スタンド経験はありません。初めてです」
森本敬一社長
「行動的というか男として熱い思いをどんな場面でも持っている。自然と応援したくなるので人徳あるのではないかと思う」

外山さんは、募金箱を持ちながら支援を呼びかけます。
「資金が集まってから制作しているわけではなくて手弁当と自腹で頑張っている。少しでもご協賛いただけないかなと思って募金をお願いしている。」

映画製作に理解をしてくれた方が募金をしてくれました。
外山泰典さん
「すみません、ありがとうございます。本当にうれしいです。」
外山さんにとって初めて挑戦する映画製作。
余計なお金を使わず、出来る限り節約するためガソリンスタンドで寝泊まりしています。

外山泰典さん
「一緒に震災味わっているくらいの気持ちでないといけないと思って住み込みでやらしてもらう。冷やかしに来たんじゃないかと思われることもあるが、私が地元の皆様に必ずいうのは私も被災して辛い思いをしました。災害ボランティアは期間が限られていますが、皆さんが心の拠り所となる祭りを残していくことが重要なんじゃないかなと思って、その部分を映像に残すお手伝いをします」
協力者の輪は、少しづつ広がっています。
珠洲市蛸島の喫茶店、「どりーむ」の経営者、室谷美恵子さんも外山さんたちの熱い想いに共感した一人です。
珠洲市蛸島の

「伝承とか伝統というのは耳で伝わっても目で見ることできないじゃないですか。そんな時に映画で残してくださるってなったらそれを後世に残していく想いが伝わって」
室谷さんは、地域の人たちを次々に紹介してくれました。
有馬尚史監督
「当初は復興というのを直接的な表現で撮っていけるのかなと思っていたが、祭りの話になったとたん、現地の人がトーンが変わって祭りに何かあるなと思って、祭りと復興が絡んでくるんでないかなと、それで祭りを取り上げようと思った」
復興に取り組む市民の心の拠り所となっている祭り。
2人は、復興と祭りを映画のテーマに決めました。

映画制作が順調に進む一方、やはり苦戦するのが制作費です。
外山さんは、次の一手に乗り出しました。
手がけるドキュメンタリー映画の制作費を500万円と見積もる外山さん。
足りない分をクラウドファンディングで調達することにしました。
期間は36日間。
ガソリンスタンドの経営者、森本さんが力を貸してくれます。
外山泰典さん
「思いを伝えて今やれることやって足りなかったらまた考えようできるかできないかよりもやるかやらないかです」
「クラウドファンディング公開します」
「36日耐久レース。よろしくお願いします」
ドキュメンタリー映画は90分程度の作品で来年末頃公開予定です。
石川県内での上映はもちろんですが、英語、中国語の字幕を付けて映画祭にも出品し、能登の魅力を広く発信したいと2人は、意気込んでいます。